積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
栞が結婚したのは、私たちが大学を卒業してから四年後のことだった。お相手は、大学時代から付き合っていた料理上手な彼だ。結婚式に招かれた私は、大好きな栞の美しい花嫁姿に嬉し涙を流した。

お色直しで花嫁が席を離れてから、私は栞の親族席の方に目をやった。栞の両親は挨拶に回っているようだ。諒はと見れば、席を立つ機会を失ったかのように、周りに集まってくる親戚たちと言葉を交わしている様子だった。

にこやかに、けれど時々は苦笑いを浮かべたりしているその表情を、私はぼんやりと眺めていた。諒はまだ独身だったから、きっとあれこれ世話を焼かれているのかもしれない、などと想像する。

久しぶりに見た諒は、すっかり落ち着いた雰囲気をまとった大人の男性になっていた。フォーマルなスーツ姿であることも、それをいっそう際立たせている。

けれどすぐに、それもそうかと納得する。私がもう二十六歳なのだから、諒もまた同じように年齢を重ねていて当然なのだ。彼の誕生日はもう過ぎている。三十歳になっているはずだった。

そう思ったら、今までと同じように「幼馴染のお兄ちゃん」などと気軽に思ってはいけないような気がして、少し寂しいような気持ちになる。

そろそろ挨拶に行ってみようかな――。

そのタイミングを図っていると、諒がこちらを見た。目が合ったような気がした。

席を立った彼は、周りに挨拶しながら近づいてくる。私の目の前まで来ると、まぶしそうに目を細めて笑った。

「瑞月、久しぶりだな。今日は来てくれてありがとう」
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