積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「あはは、確かにそうだよな」

諒は笑った。それからすぐにその笑いを収め、柔らかな眼差しで私をじっと見つめた。

「本当に、ますます綺麗になった」

「そ、それはどうも、ありがとう……」

戸惑った。心の奥をくすぐるような、しみじみとした言い方をされて、どぎまぎしてしまった。

「綺麗になったのは、もしかして恋人がいるせい?」

あまりにさらりと尋ねられたものだから、私も反射的にさらりと答えた。

「うん。いるよ」

諒の目が僅かに開かれた。頬には戸惑いがにじんだようにも見える、複雑そうな笑みが浮かんだ。

「……へぇ、そうなのか。その人はお前のことを、ちゃんと大事にしてくれているのか?」

「うん。私はそう思ってるよ」

「結婚、考えてるのか?」

「どうかなぁ。付き合ってそろそろ一年くらいになるけど、そういう話をしたことはまだないわね。でも、そうね。私は彼なら、って思ってる」

「そうか。もしも決まったら教えてくれよな。その時は盛大に祝ってやるからさ」

「そうだね。その時が来たらね」

私はふふっと笑うと、お色直しを終えて席に戻って来た栞の方へ目を向けた。

「私、栞と写真撮ってくるね」

「あぁ、行ってこい。……なぁ、瑞月。今度また、みんなで飯にでも行こうぜ」

「いいわね。でも、一番忙しいのって諒ちゃんなんじゃない?時間ができたらぜひ連絡して。楽しみに待ってるね」

その時、諒の笑顔が翳ったことには気づかないまま、私は栞の元へ向かった。
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