積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
凜は俺の顔をしげしげと見て、それから意味ありげな目をした。

「ふぅん……。早速、ムシのチェックってわけね」

「身内が輪の中にいない方がいいだろ」

「心配ならこっちに呼べばいいじゃない。そんな顔していないでさ」

凜の声に呆れたような響きが混じった。

俺はふいっと顔を背けた。けれど目だけは一点から動かさない。そこには瑞月がいるから。

「……ムシなら、もうついた」

凛が目を丸くする。

「え?瑞月ちゃんに、彼ができたってこと?」

「披露宴で話した時に聞いた。しかもあいつ、花みたいな甘い香りさせてた」

「香り?香水かなんかをつけてたってこと?だってそれは、別に普通でしょ」

「そうだよな、そうなんだけどさ……」

何年か前、ある小さなハプニングがあった時に瑞月と交わした会話のことが思い出されて、胸の奥に痛みを感じる。

「とうとう瑞月も大人になってしまったんだな……」

「まぁねぇ、男ができるようなお年頃なわけだし」

「男とか言うなよ。もうちょっとオブラートに包め」

「やぁね、苛々しちゃって。あ、そうか。生々しく感じちゃうわけね。でも彼氏なら、特に理由がないなら、体の関係は普通にあるでしょうよ。そうやって相手の男に嫉妬するくらいだったら、もっと早く行動起こせばよかったのに。ま、今さらね」

「うるさいな」
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