積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
諦められるかもしれない、いや、もう諦めよう――。
そう思って、その小さな事件の後しばらくたってから、当時俺に好意を持ってくれていた他の女性と付き合ってみたこともあった。付き合い始めたばかりだったし、栞にも凜にも、そして瑞月にも内緒にしておきたいと思いながらの交際だった。俺も彼女のことは嫌いではなかったから、このまま気持ちが育っていくかもしれない、などと思っていた。
ある日、俺とその彼女が二人で歩いているところを凜に見られた。見られたことは、別にまずくはない。ただ、気まずかった。凜は、俺の複雑な想いを知っていたから。
後日凜と会った時、やつは言ったのだ。
「遠目に見た時、てっきり瑞月ちゃんと歩いているのかと思っちゃった」
凜に何気なく言われて、俺は気づいてしまった。その人自身を好きだと思っていたけれど、実際は彼女の向こう側に、俺は瑞月を見て、求めていたのだ。やっぱり瑞月を簡単には諦め切れないと思った瞬間でもあった。
その頃を思い出して苦笑しながら、俺は腕を組んだ。
「そうできたら、楽だろうな」
ひとり言めいてそうつぶやいた時、頭の上で聞き慣れた声がした。瑞月だった。
「諒ちゃん、凛ちゃんも、どうしてこんな端っこにいるのよ」
「身内が混ざらない方が盛り上がると思ってさ」
「何それ」
瑞月は可笑しそうにふふふっと笑う。
そう思って、その小さな事件の後しばらくたってから、当時俺に好意を持ってくれていた他の女性と付き合ってみたこともあった。付き合い始めたばかりだったし、栞にも凜にも、そして瑞月にも内緒にしておきたいと思いながらの交際だった。俺も彼女のことは嫌いではなかったから、このまま気持ちが育っていくかもしれない、などと思っていた。
ある日、俺とその彼女が二人で歩いているところを凜に見られた。見られたことは、別にまずくはない。ただ、気まずかった。凜は、俺の複雑な想いを知っていたから。
後日凜と会った時、やつは言ったのだ。
「遠目に見た時、てっきり瑞月ちゃんと歩いているのかと思っちゃった」
凜に何気なく言われて、俺は気づいてしまった。その人自身を好きだと思っていたけれど、実際は彼女の向こう側に、俺は瑞月を見て、求めていたのだ。やっぱり瑞月を簡単には諦め切れないと思った瞬間でもあった。
その頃を思い出して苦笑しながら、俺は腕を組んだ。
「そうできたら、楽だろうな」
ひとり言めいてそうつぶやいた時、頭の上で聞き慣れた声がした。瑞月だった。
「諒ちゃん、凛ちゃんも、どうしてこんな端っこにいるのよ」
「身内が混ざらない方が盛り上がると思ってさ」
「何それ」
瑞月は可笑しそうにふふふっと笑う。