積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
翌日、私は仕事を終えると適当に軽食を買って、将司の部屋へ向かった。会社を出る頃に再び入ったメッセージには、食事は済ませてから戻るとあったから、自分の分しか買わない。

私は、二、三か月ほど前に渡された合鍵を使って、彼の部屋に入った。

これを使うのが、今日が最初で最後になるなんてね――。

食欲はそんなになかったから、軽く口に入れる程度にした。その後は、どう話を切り出そうかと考えながら私物を探して部屋中を見て回り、持参していた大きめのマイバッグに放り込んだ。回収が終わってバッグの中を覗き込んで思う。

意外と持ってきていなかったんだな――。

将司との交際期間は一年と数か月ほどだった。今回のことがなかったら、この部屋にはもっと私の物が増えていたのかもしれない。

ふとそんなことを思いながら、私は将司の帰りを待っていた。

彼が帰って来たのは九時前だった。

玄関まで出て行ったりはしない。私はソファに座ったまま、帰って来た将司に顔を向けた。

「おかえりなさい」

「待たせてごめん。少し残業になってしまってさ」

いつもと変わらない笑みを浮かべる将司に対して、私は固い声で言った。

「食事は済ませて来るって書いてあったから、何も用意していないけど。よかったのよね?」

「あぁ、大丈夫だよ。それで、話したいことって何?」

「ねぇ、まずは座って?」

スーツの上着を脱ごうとしていた将司の動きが止まった。
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