積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私はおもむろに立ち上がった。言いたいことはもうない。

はっとした顔で将司も立ち上がり、私に手を伸ばした。

「瑞月、待って!話し合おう」

その手をかわし、私は哀しい目で彼を見た。

「話し合うって、何を?今さら話し合ったところで、結果は変わらないわ。浮気したあなたを許して、これからも一緒にいることなんて、私にはできないもの」

「待ってくれ。頼むから、冷静になって。彼女の方から誘って来たんだ。それで、つい……」

「私は最初から冷静よ。つい、魔が差したんでしょ?あの時あの人、あなたの方からも何回かは誘ってきた、って言っていたわね」

「あれは、彼女の思い込みであって……」

「仮に彼女の思い込みだったとしても、彼女と関係したことは事実なんでしょう?」

「そ、それは……」

「相手が誘ってきたから魔が差した。だから今回のことは許せって言いたいの?さっきも言ったけど、私には無理なの」

「でも、俺は君と別れたくない。好きなんだよ、瑞月」

「それなら、どうして彼女を抱いたりしたの?浮気したの?そんなの、勝手すぎる」

「瑞月……」

「さようなら。会社で会っても、お願いだから、必要以上に声はかけないでください」

私は投げつけるようにそう言って、将司の部屋を走り出た。私を呼び止めようとする彼の声がひどく虚しいものに聞こえた。
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