積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
外に出てしばらく歩いたところで立ち止まり、私は後ろを振り返った。将司は追いかけては来なかった。

追って来られたとしても、私の気持ちは変わらないけれど――。

別れというものは意外と突然やってきたりするものなんだなと、変なところで感心してしまう。昨日の午前中までの私は幸せだったはずなのに、まさかこんなことになるとは思っていなかった。けれどショックが大きすぎるためなのだろうか、不思議と涙の一滴もこぼれない。

私は駅の方に向かって歩きながら、この後どうしようかと考えた。

「どうせ明日は休みだし、飲みに行こうか。それで少しでも早く忘れよう」

今までの私だったら、一人で飲みに行こうなどと、考えもしなかっただろう。自暴自棄になっているわけではないけれど、とにかく今は、何かに頼って頭も心も空っぽにしたいと思った。

駅近くの繁華街に足を向けた私は、とりあえず目についた居酒屋に入り、おつまみ類とサワーを注文した。もともとそんなに強いわけではない。一杯飲んだところで、自分でもいい感じと思うくらいの酔いが回ってきた。しかし、それだけではまだ足りなかった。どうせなら何もかもが分からなくなるほどに、とことん酔ってしまいたかった。

私は次の店を探して、ふらふらとした足取りで飲み屋街を歩いていたが、近くに凜の店があることをふと思い出す。私は元来た道を引き返した。
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