積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「ほらほら、瑞月ちゃんたら、飲みすぎだってば。お酒はもうおしまい!もうこっちにしなさい」

困ったような、呆れたような、少し低めの声が遠くの方でぼんやりと聞こえた。

それに対して、私は駄々をこねる子どものような反応をする。

「やだっ!まだ飲みたいの!」

年甲斐もなく恥ずかしい真似をしているという自覚は、酔ってはいながらもかろうじてあった。けれど、今はそんなことはどうでもいいことのように思われた。普段ずっと自分を縛っている枷のようなものが取り払われて、すべてのものから自由になったかのような、とにかく開放的な気分だった。

「まったく、いったい何があったっていうの?瑞月ちゃんって、お酒に弱かったはずよね?それなのにこんなになるまで飲むなんて、らしくないわよ。しかもここに来る前にも、一人で飲んできただなんて……。わたしでよければ話してみなさい。少しは楽になるかもよ」

凜の優しい声が心にじわりと染み入ってくる。そのおかげで、何かのスイッチが私の中で切り替わってしまった。悲しみやら悔しさやらがどっと押し寄せてきて、目からぼろぼろと涙がこぼれた。

「うわぁん!凛ちゃんっっ」

私は泣きながら凜に抱きついた。

「本当にもう、どうしちゃったのよ」

凜は驚きながらも私を抱き止める。
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