不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
やり直し
「黒瀬さん、すみません!」
「黒瀬先生、大変申し訳ありません!」
「あぁ、悪いな」
事務所に入るなり、三人の謝罪がぶつかった。
私たちはともかく、なんで黒瀬さんまで謝ってるのだろうと思ったら、池戸さんが捕まらなかったらしい。
池戸さんは彼女にどこかに連れていけと言われて、温泉に向かっているらしい。
『ここで引き返したら彼女にフラれます……』と泣きが入ったそうだ。それは無理もない。
ということは、黒瀬さんと私だけで頑張るしかないということだ。
「まずは方針を立てよう。それで相沢さんにチェックしてもらって、具体的に展開させる」
黒瀬さんが早速指示を出した。
私たちは図面を見ながら、対策を考えた。
「ここの部分の荷重を軽くしたら、柱一本でいけないか?」
「いえ、ちょっと難しいです。でも、ここを変えてもらえたら……」
「あ、じゃあ、ここをこう変更したらどうですか?」
「いいね、その線でいこう」
「それなら強度ばっちりです!」
概要を決めて、最後にもう一度強度計算をしてもらい、方針が固まった。あとはひたすら詳細図面に落とし込んでいくだけだ。
残って見守ると言い張る相沢さんをなんとかなだめて帰ってもらう。
もう彼のできることはないから、青ざめた顔でウロウロされても気が散るだけだ。
「じゃあ、やりますか!」
コーヒーを淹れて、私は気合いを入れた。
黒瀬さんもうなずく。
「目標は日曜の十二時だ。それでバイク便を出して、施工業者に確認してもらう。OKだったら、山田さんが申請書を作って月曜日に自治体に出してもらう手はずになっている」
私が戻ってくる間に段取りをしていたのだろう。
さすがに仕事が早い。
「業者さんに日曜の昼から出てきてもらうんですか?」
「担当者に拝み倒してな」
「申し訳ありません……」
黒瀬さんに下げなくてもいい頭を下げさせてしまった上、工事関係者にも迷惑をかけてしまって、とても心苦しい。
しょぼくれた私の頭を黒瀬さんが気にするなというように撫でた。
「瑞希が悪いわけじゃない」
「でも、うちの会社の責任です」
「そう思うなら、さっさと手を動かせ」
「はい!」
「いい返事だ」
するりと私の頭をもうひと撫でしてから、黒瀬さんは目を細めた。
トクンと胸が高鳴る。
そんな顔をされるとどうしたらいいかわからなくなってしまう。
慌てて目を逸らし、パソコンに向かった。
「黒瀬先生、大変申し訳ありません!」
「あぁ、悪いな」
事務所に入るなり、三人の謝罪がぶつかった。
私たちはともかく、なんで黒瀬さんまで謝ってるのだろうと思ったら、池戸さんが捕まらなかったらしい。
池戸さんは彼女にどこかに連れていけと言われて、温泉に向かっているらしい。
『ここで引き返したら彼女にフラれます……』と泣きが入ったそうだ。それは無理もない。
ということは、黒瀬さんと私だけで頑張るしかないということだ。
「まずは方針を立てよう。それで相沢さんにチェックしてもらって、具体的に展開させる」
黒瀬さんが早速指示を出した。
私たちは図面を見ながら、対策を考えた。
「ここの部分の荷重を軽くしたら、柱一本でいけないか?」
「いえ、ちょっと難しいです。でも、ここを変えてもらえたら……」
「あ、じゃあ、ここをこう変更したらどうですか?」
「いいね、その線でいこう」
「それなら強度ばっちりです!」
概要を決めて、最後にもう一度強度計算をしてもらい、方針が固まった。あとはひたすら詳細図面に落とし込んでいくだけだ。
残って見守ると言い張る相沢さんをなんとかなだめて帰ってもらう。
もう彼のできることはないから、青ざめた顔でウロウロされても気が散るだけだ。
「じゃあ、やりますか!」
コーヒーを淹れて、私は気合いを入れた。
黒瀬さんもうなずく。
「目標は日曜の十二時だ。それでバイク便を出して、施工業者に確認してもらう。OKだったら、山田さんが申請書を作って月曜日に自治体に出してもらう手はずになっている」
私が戻ってくる間に段取りをしていたのだろう。
さすがに仕事が早い。
「業者さんに日曜の昼から出てきてもらうんですか?」
「担当者に拝み倒してな」
「申し訳ありません……」
黒瀬さんに下げなくてもいい頭を下げさせてしまった上、工事関係者にも迷惑をかけてしまって、とても心苦しい。
しょぼくれた私の頭を黒瀬さんが気にするなというように撫でた。
「瑞希が悪いわけじゃない」
「でも、うちの会社の責任です」
「そう思うなら、さっさと手を動かせ」
「はい!」
「いい返事だ」
するりと私の頭をもうひと撫でしてから、黒瀬さんは目を細めた。
トクンと胸が高鳴る。
そんな顔をされるとどうしたらいいかわからなくなってしまう。
慌てて目を逸らし、パソコンに向かった。