不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
「おい、こら。そこは俺のベッドだ。仮眠室はあっちだ」

 いきなり布団を剥がされて肩を揺すぶられる。

(眠いんだから、邪魔しないで!)
 
 寒いのと、揺すぶられるのを止めようと、その手を抱き込んだ。

「うわっ」
 
 私の動きが予想外だったのか、黒瀬さんは私の上に倒れ込む。
 彼の身体は温かく、私は彼にしがみついた。

「あったかい……」
「瑞希、寝ぼけてるのか? 目を覚ませ!」
「……いやよ……黒瀬さんも寝ましょ?」

 私はとにかく眠たくて、自分が眠るためには黒瀬さんも眠らせなくてはと考えた。私を引きはがそうとする彼の身体に逆にからみついた。
 目を閉じているから表情は見えなかったけど、やけに焦っているような黒瀬さんが新鮮でおもしろいと頭の片隅で思った。

「おい、そんな恰好でひっつくな! 襲われたいのか!?」
「んんー? いい、ですよ」
「襲ってもか?」
「……ん……くろせ……さん、なら……いい……」
 
 広い胸板に頬を摺り寄せ、思ったままをつぶやく。
 彼の体温が心地よかった。もっと彼を感じたいと思ってしまった。
 でも、息を呑んだような振動が伝わってくる。
 
(黒瀬さんはなにをそんなに驚いてるのかしら?)

 そう思うものの、思考を進める前に、私は眠りの沼に沈んでいった。

「瑞希、起きたら覚えとけよ!」

 黒瀬さんの叫びを遠くで聞きながら。
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