不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

大人の余裕

 私が必死で平常心を保とうとしていたのに、翌日事務所に行ったら、黒瀬さんはいたって普通だった。さっそくガンガンに仕事の指示を飛ばす。
 さすが大人の男よね。余裕がある。
 でも、そうならそうで、少しぐらい甘い顔を見せてくれてもいいのに、なんて思ってしまう。
 そんなことを考えながらきっちり働いた金曜日の定時後、帰ろうとしたら、黒瀬さんの腕に囲われた。

「なに帰ろうとしてるんだ?」

 後ろからハグされて、耳もとでささやかれる。
 さっきまで真面目な顔で設計してたくせに、色気が垂れてきそうな声だ。
 一瞬で全身の血が湧きたち、熱くなる。
 池戸さんは帰ったあとで、プライベートな時間に突入したらしい。

「ずっと我慢してたんだから、泊まっていけよ」

 顎を持たれて、顔だけ彼のほうへ向けられる。
 なにをと聞くまでもなく、その熱を帯びたまなざしに中てられ、身体の奥が疼く。
 くすぐるように頬を撫でられ、キスされる。

「でも、なんの用意もしてませんし」
「またコンビニで買ってきたらいいだろ?」
 
 少し抵抗するふりをするけど、黒瀬さんは強引に誘ってきて、それをうれしく感じる私がいた。
 結局そのまま甘い夜を過ごした。
 平日は素知らぬ顔で通し、金曜の夜になると、抱き合うというのが二週続いた。
 黒瀬さんはエッチですぐ私に触れてくる。
 私は簡単に身も心も蕩かされてしまった。
 彼にどんどんはまっていっている自分が怖くなる。
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