不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
「よい設計をするには、ささいな違和感を見逃さないことだ。それは人に対しても同じだと思ってる。今日、瑞希は一度も俺と目を合わせなかったな。なぜだ?」

(えらそうに!)

 カッとして、私は怒りを抑えながら答えた。

「なぜ? そんな繊細な視点を持っているのに、どうしてわからないんですか?」

 わからないと言われること自体が腹立たしい。
 その程度の存在だと言われてるみたいで。
 私は胸に詰まってた言葉を投げつけた。

「どうせ、セフレに本命を見られても別になんとも思わないんでしょうね」

 すると、殺気立った様子で、黒瀬さんが私の両肩を持ち、強引に振り向かせた。
 鋭い目がよりいっそう尖っていて、怖いくらいだ。

「誰が誰のセフレだって?」

 低い声で問い詰めてくる。
 そんなこと言いたくなくて、私は横を向く。

「私はそんなこと思ってません!」
「俺だってセフレだなどと思ったことはない!」

 黒瀬さんが怒鳴った。
 なんで私が怒られないといけないのかと思い、私も怒鳴り返す。

「セフレじゃなかったら、本命の代わりですか!?」
「本命ってなんだ!? ……ちょっと待て。もしかして綾香のことか?」

 いきなり彼は理解したのか、額に手を当てた。
 もしかしなくても、そうに決まってる。なんでそれを思いつかなかったのかが不思議だ。
 でも、彼は「まいったな」とつぶやいてから、キュッと口端を上げて、いつもの笑みを浮かべた。
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