不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

誤解

「嫉妬したのか?」

 癪なくらい色気のある顔で、私の頬を撫でてくるから、その手を振り払った。

 (あんなの嫉妬するに決まってるじゃない!)

 やるせない気持ちで彼を睨みつける。
 そうでもしないと泣き出しそうだったのだ。
 それなのに、黒瀬さんは私を抱き寄せてきた。
 私は手を突っ張って彼から離れようとするが、その力には敵わず、腕に囲われる。
 黒瀬さんは顔を近づけて、目を合わせた。

「瑞希、誤解させて悪かった。あいつは妹だ」
「え? なに言ってるんですか。そんな白々しい嘘をつかなくてもいいんですよ?」
「嘘なわけないだろ。俺のもともとの名前は神野諒だ。縁を切ったから、母方の姓の黒瀬を名乗ってるが」
「縁を切るって……えぇー?」

 突然の情報量に私は混乱して、声を上げた。
 黒瀬さんが実は神野さんで、綾香さんは妹で……?
 ってことは、綾香さんは本命じゃない?
 私はまじまじと彼を見つめた。

「俺が好きなのは瑞希だ。なんで勝手にセフレになってるんだよ」

 黒瀬さんがぼやく。
 いまだ信じられない思いで、彼を見上げる。
 黒瀬さんが好きなのは私?

「……もう一度言って?」

 瞳が潤んでくる。
 本当に信じてもいいの?
 そんな私の疑念を感じたようで、黒瀬さんが言った。

「瑞希が好きだ。……どうやらわからせないといけないようだな」

 私の唇をゆっくり指で撫でて、彼はニヤリと笑った。完全に悪い男の笑みだ。
 ぞくりと背筋が官能に震える。
 私は愛をささやかれながら、熱い夜を過ごすことになった。
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