毒舌おにいさんと天然おねえさん
深夜のうたのおにいさん
部屋は個室で、疲れて眠ろうと思ったとき――それは予想外の出来事が起きたのだ。夜遅くにうたのおにいさんが私の部屋にやってきたのだ。
それはまずいでしょ、と思ったとき……
「こういうときのほうが、週刊誌に嗅ぎつけられることもないからな」
人刺し指を一本たてにして「しーっ」といいながら入ってきた。
まさかの深夜のうたのおにいさんを間近で見ることができるなんて。
男子学生の修学旅行の夜のノリ、そのものだった。
私は声にならずに、部屋着のまま立ち尽くしていた。
メイクも落としてしまい、ノーメイクのままでこの人に会ってしまうとは。
「何しに来たの?」
「お前の顔を見に遊びに来たんだって」
「ノーメイクの顔を……?」
思わず本音が出てしまった。
「おまえはメイクしてもしなくても、かわらないな」
それは褒められているのか? けなされているのか?
突然おにいさんが壁ドンをする。少女漫画ならば胸キュンポイントだが、いまいち自分の立ち位置がわからない私としては、どうすればいいのか何が目的なのか、わからないでいた。
「なんで連絡してこない?」
「文章が思いつかなくって……毎日会うから直接話せばいいし」
「俺の連絡先知っているのは、超貴重だぞ」
「個人的に連絡とりあうのって、やっぱりうたのおねえさんとしては失格だと思うし」
「なんでお前はそんなに馬鹿まじめなんだろうな……」
それは不意打ちの出来事だった。キスされたのだ。
ファーストキスだったのに――それも憧れの人と不意打ちで。
「おまえなんか、大嫌いだけどな」
なんたるドS発言。こんなこと言われたら普通幻滅するのだろうが――
相手は超美形男子。何を言われても私のような恋愛初心者は心を許してしまう。
「私のこと嫌いなのに、なんでキスするの?」
「俺のものにしたいからに決まっている――だろ?」
「なんで……?」
矛盾しているこの発言。このドS男は俺様気質がすごい。切れ長の瞳がきれいで、目力が鋭く刃のごとく切り刻まれそうだった。なぜかはわからないけど、この危険オーラ爆発のおにいさんに好かれてしまったのだろうか?
かなり物好きなおにいさん……これは運命だと勘違いしてもいいものだろうか?
でも、この曲者と恋愛初心者の私が交際するのは――至難の業だろう。
かなり大変なのではないのだろうか??
「キス=交際とか思っているんじゃないだろうな? つきあうつもりはないから」
何――その急に天国から地獄に振り落とすようなセリフ。
あからさまにがっかりな表情をしてしまった。
「うたのおにいさんを卒業したら、つきあうか?」
え……? 何、その提案?
「俺のこと好きだろ?」
「好きじゃないよ」
「そんなこというなら、キスするぞ」
まさかの二回目? 瞳を閉じて、キス態勢完了。
「痛っ……」デコピンされた。キスではなかった。
期待した私が馬鹿だった。
「好きだと言うまで帰らないぞ」
「じゃあ言わない」
そんな私たちはじゃれあいながら、一緒にいると楽しい。気が合うのかもしれない。
「ちゃんと連絡しろよな、待っているからな」
といいながら……二回目の深いキスをおにいさんからプレゼントされた。
まさかの二回目。
右肩が触れるだけで、緊張していたのに。
唇が柔らかく触れ合う。
こんなことがあるなんて――
「卒業したらよろしくお願いします」
大好きな人の顔が間近にあったせいで、私は顔が火照った状態で返事をした。
「よし」
まるで私への扱いはペットだ。ペットのように私の髪を撫でる。
おにいさんの瞳は美しいけれど、どこか氷のような冷たさを秘めていた。
もし、この人の氷を解かすことができれば――
彼に本当の幸せを与えられるのかもしれない。
これは、禁断の愛だ。世間に知られてはいけない。
もちろんスタッフにも仲間にも、この恋は絶対秘密事項だ。
それはまずいでしょ、と思ったとき……
「こういうときのほうが、週刊誌に嗅ぎつけられることもないからな」
人刺し指を一本たてにして「しーっ」といいながら入ってきた。
まさかの深夜のうたのおにいさんを間近で見ることができるなんて。
男子学生の修学旅行の夜のノリ、そのものだった。
私は声にならずに、部屋着のまま立ち尽くしていた。
メイクも落としてしまい、ノーメイクのままでこの人に会ってしまうとは。
「何しに来たの?」
「お前の顔を見に遊びに来たんだって」
「ノーメイクの顔を……?」
思わず本音が出てしまった。
「おまえはメイクしてもしなくても、かわらないな」
それは褒められているのか? けなされているのか?
突然おにいさんが壁ドンをする。少女漫画ならば胸キュンポイントだが、いまいち自分の立ち位置がわからない私としては、どうすればいいのか何が目的なのか、わからないでいた。
「なんで連絡してこない?」
「文章が思いつかなくって……毎日会うから直接話せばいいし」
「俺の連絡先知っているのは、超貴重だぞ」
「個人的に連絡とりあうのって、やっぱりうたのおねえさんとしては失格だと思うし」
「なんでお前はそんなに馬鹿まじめなんだろうな……」
それは不意打ちの出来事だった。キスされたのだ。
ファーストキスだったのに――それも憧れの人と不意打ちで。
「おまえなんか、大嫌いだけどな」
なんたるドS発言。こんなこと言われたら普通幻滅するのだろうが――
相手は超美形男子。何を言われても私のような恋愛初心者は心を許してしまう。
「私のこと嫌いなのに、なんでキスするの?」
「俺のものにしたいからに決まっている――だろ?」
「なんで……?」
矛盾しているこの発言。このドS男は俺様気質がすごい。切れ長の瞳がきれいで、目力が鋭く刃のごとく切り刻まれそうだった。なぜかはわからないけど、この危険オーラ爆発のおにいさんに好かれてしまったのだろうか?
かなり物好きなおにいさん……これは運命だと勘違いしてもいいものだろうか?
でも、この曲者と恋愛初心者の私が交際するのは――至難の業だろう。
かなり大変なのではないのだろうか??
「キス=交際とか思っているんじゃないだろうな? つきあうつもりはないから」
何――その急に天国から地獄に振り落とすようなセリフ。
あからさまにがっかりな表情をしてしまった。
「うたのおにいさんを卒業したら、つきあうか?」
え……? 何、その提案?
「俺のこと好きだろ?」
「好きじゃないよ」
「そんなこというなら、キスするぞ」
まさかの二回目? 瞳を閉じて、キス態勢完了。
「痛っ……」デコピンされた。キスではなかった。
期待した私が馬鹿だった。
「好きだと言うまで帰らないぞ」
「じゃあ言わない」
そんな私たちはじゃれあいながら、一緒にいると楽しい。気が合うのかもしれない。
「ちゃんと連絡しろよな、待っているからな」
といいながら……二回目の深いキスをおにいさんからプレゼントされた。
まさかの二回目。
右肩が触れるだけで、緊張していたのに。
唇が柔らかく触れ合う。
こんなことがあるなんて――
「卒業したらよろしくお願いします」
大好きな人の顔が間近にあったせいで、私は顔が火照った状態で返事をした。
「よし」
まるで私への扱いはペットだ。ペットのように私の髪を撫でる。
おにいさんの瞳は美しいけれど、どこか氷のような冷たさを秘めていた。
もし、この人の氷を解かすことができれば――
彼に本当の幸せを与えられるのかもしれない。
これは、禁断の愛だ。世間に知られてはいけない。
もちろんスタッフにも仲間にも、この恋は絶対秘密事項だ。