はじめまして、期間限定のお飾り妻です
12話 面接
「あの、どうかしましたか?」
イレーネはリカルドに見つめられ、首を傾げた。
「い、いえ。何でもありません。それでは遅くなりましたが、面接を行いましょうか? どうぞ、もう一度お掛け下さい」
「はい、それでは失礼いたします」
丁寧に返事をすると、イレーネは再びソファに腰掛けて背筋を伸ばす。その様子を見届けるとリカルドも向かい側のソファに腰掛けた。
「それではまず紹介状を見せていただけますか?」
「はい、どうぞ」
イレーネはショルダーバッグから封筒に入った紹介状を取り出すと、テーブルの上に置いた。
「それでは拝見いたします」
開封すると、リカルドは紹介状にじっくり目を通し……顔を上げた。
「なるほど、イレーネさんは男爵令嬢なのですね?」
「はい、そうです。ですが……お恥ずかしいお話ではありますが、男爵とは名ばかりです」
その言葉にリカルドは改めてイレーネを見つめる。
(確かに、着ているドレスも鞄もかなり流行遅れではあるな……あまりお金に余裕は無いのだろう)
「それで、イレーネさんが今回、こちらの求人に応募したことは職業紹介所の人以外はご存知ないのですか?」
「はい、もちろんです」
「ご家族もですか?」
するとイレーネは首を振った。
「いいえ、家族はいません。唯一の肉親である祖父も半月ほど前に亡くなり、今は完全にひとりですので」
「え? そうだったのですか? それは……大変御苦労されたのですね……でも、これはある意味好都合かも……」
疲れていたリカルドは、うっかり本音を口にしてしまった。
「え? 何かおっしゃいましたか?」
「いえ、こちらのことです。では、今一人で暮らしていらっしゃるのですね?」
「はい、そうです」
「それで……これが一番重要な質問なのですが、募集要項にもありましたがイレーネさんには婚約者、もしくは結婚を約束したような方はいらっしゃいますか?」
「いえ、そのような方はおりません」
そこだけはしっかり強調するイレーネ。
「なるほど……」
リカルドは考えた。
(口も固く、落ちぶれているとは言っても男爵令嬢。それにしっかり教育も受けているようで素養もありそうだ。あれだけ長い時間放置されていたにも関わらず苛立つこともない。何より、天涯孤独の身であるならば……)
そしてチラリとイレーネを見つめ……口を開いた。
「イレーネさん。実はこの求人は最近出したばかりなのですが、既に十人程、応募の方がいらしたのですが……あいにく全員不採用とさせていただきました。今回募集しているのは一人だけしたので。そして彼女たちは……募集要項に適した方達ではありませんでした」
「そうなのですね?」
(確かに、これだけ大きなお屋敷なら、働いている使用人たちは大勢いるものね)
頷きながらイレーネは思った。
「実は今、マイスター伯爵家では後継者問題が起きているのです」
突然リカルドは話を変えた。
「後継者問題……ですか?」
「ええ。現マイスター伯爵家の当主は高齢になった為に、次の当主を若い世代にその座を譲ろうとしているのです」
「なるほど、良くあるお話ですね」
相槌を打つイレーネ。
「そこで、次の当主に2人の人物の名が挙げられました。一つは、この屋敷の主である、ルシアン・マイスター。もうひとりが彼の従兄弟にあたる男性です。そして……当主になるための条件が結婚です」
リカルドはついに核心に触れた――
イレーネはリカルドに見つめられ、首を傾げた。
「い、いえ。何でもありません。それでは遅くなりましたが、面接を行いましょうか? どうぞ、もう一度お掛け下さい」
「はい、それでは失礼いたします」
丁寧に返事をすると、イレーネは再びソファに腰掛けて背筋を伸ばす。その様子を見届けるとリカルドも向かい側のソファに腰掛けた。
「それではまず紹介状を見せていただけますか?」
「はい、どうぞ」
イレーネはショルダーバッグから封筒に入った紹介状を取り出すと、テーブルの上に置いた。
「それでは拝見いたします」
開封すると、リカルドは紹介状にじっくり目を通し……顔を上げた。
「なるほど、イレーネさんは男爵令嬢なのですね?」
「はい、そうです。ですが……お恥ずかしいお話ではありますが、男爵とは名ばかりです」
その言葉にリカルドは改めてイレーネを見つめる。
(確かに、着ているドレスも鞄もかなり流行遅れではあるな……あまりお金に余裕は無いのだろう)
「それで、イレーネさんが今回、こちらの求人に応募したことは職業紹介所の人以外はご存知ないのですか?」
「はい、もちろんです」
「ご家族もですか?」
するとイレーネは首を振った。
「いいえ、家族はいません。唯一の肉親である祖父も半月ほど前に亡くなり、今は完全にひとりですので」
「え? そうだったのですか? それは……大変御苦労されたのですね……でも、これはある意味好都合かも……」
疲れていたリカルドは、うっかり本音を口にしてしまった。
「え? 何かおっしゃいましたか?」
「いえ、こちらのことです。では、今一人で暮らしていらっしゃるのですね?」
「はい、そうです」
「それで……これが一番重要な質問なのですが、募集要項にもありましたがイレーネさんには婚約者、もしくは結婚を約束したような方はいらっしゃいますか?」
「いえ、そのような方はおりません」
そこだけはしっかり強調するイレーネ。
「なるほど……」
リカルドは考えた。
(口も固く、落ちぶれているとは言っても男爵令嬢。それにしっかり教育も受けているようで素養もありそうだ。あれだけ長い時間放置されていたにも関わらず苛立つこともない。何より、天涯孤独の身であるならば……)
そしてチラリとイレーネを見つめ……口を開いた。
「イレーネさん。実はこの求人は最近出したばかりなのですが、既に十人程、応募の方がいらしたのですが……あいにく全員不採用とさせていただきました。今回募集しているのは一人だけしたので。そして彼女たちは……募集要項に適した方達ではありませんでした」
「そうなのですね?」
(確かに、これだけ大きなお屋敷なら、働いている使用人たちは大勢いるものね)
頷きながらイレーネは思った。
「実は今、マイスター伯爵家では後継者問題が起きているのです」
突然リカルドは話を変えた。
「後継者問題……ですか?」
「ええ。現マイスター伯爵家の当主は高齢になった為に、次の当主を若い世代にその座を譲ろうとしているのです」
「なるほど、良くあるお話ですね」
相槌を打つイレーネ。
「そこで、次の当主に2人の人物の名が挙げられました。一つは、この屋敷の主である、ルシアン・マイスター。もうひとりが彼の従兄弟にあたる男性です。そして……当主になるための条件が結婚です」
リカルドはついに核心に触れた――