はじめまして、期間限定のお飾り妻です
132話 運命のレセプション ①
ルシアンが取引を行っている大企業が開催するレセプションの日がとうとうやってきた。
タキシード姿に身を包んだルシアンはエントランスの前でリカルドと一緒にイレーネが現れるのを待っていた。
「ルシアン様、いよいよ今夜ですね。初めて公の場にイレーネさんと参加して婚約と結婚。それに正式な次期当主になられたことを発表される日ですね」
「ああ、そうだな……発表することが盛り沢山で緊張しているよ」
「大丈夫です、いつものように堂々と振る舞っておられればよいのですから」
そのとき――
「どうもお待たせいたしました、ルシアン様」
背後から声をかけられ、ルシアンとリカルドが同時に振り返る。すると、濃紺のイブニングドレスに、金の髪を結い上げたイレーネがメイド長を伴って立っていた。
その姿はとても美しく、ルシアンは思わず見とれてしまった。
「イレーネ……」
「イレーネさん! 驚きました! なんて美しい姿なのでしょう!」
真っ先にリカルドが嬉しそうに声を上げ、ルシアンの声はかき消される。
「ありがとうございます。このようなパーティードレスを着るのは初めてですので、何だか慣れなくて……おかしくはありませんか?」
「そんなことは……」
「いいえ! そのようなことはありません! まるでこの世に降りてきた女神様のような美しさです。このリカルドが保証致します!」
またしても興奮気味のリカルドの言葉でルシアンの声は届かない。
(リカルド! お前って奴は……!)
思わず苛立ち紛れにリカルドを睨みつけるも、当の本人は気付くはずもない。
「はい、本当にイレーネ様はお美しくていらっしゃいます。こちらもお手伝いのしがいがありました」
メイド長はニコニコしながらイレーネを褒め称える。
「ありがとうございます」
その言葉に笑顔で答えるイレーネ。
「よし、それでは外に馬車を待たせてある。……行こうか?」
「はい、ルシアン様」
その言葉にリカルドが扉を開けると、もう目の前には馬車が待機している。
2人が馬車に乗り込むと、リカルドが扉を閉めて声をかけてきた。
「行ってらっしゃいませ、ルシアン様。イレーネさん」
「はい」
「行ってくる」
こうして2人を乗せた馬車は、レセプション会場へ向かって走り始めた。
「そう言えば私、ルシアン様との夜のお務めなんて初めての経験ですわ。何だか今から緊張して、ドキドキしてきました」
イレーネが顔を赤らませる。
「うん、うん。言われてみればたしかにそうだな。だが、くれぐれも他の人達の前で不用意にそんな言葉は口にしないようにしてくれ。……勘違いされかねないからな」
「勘違い……ですか? 何だか良く分かりませんが、ルシアン様の仰るとおり口にしないように致しますね」
「ああ、くれぐれもよろしく頼む」
苦笑しながらルシアンは念を押す。
「それで、まずはレセプション会場に到着してからの手順だが、馬車を降りたら2人で一緒に会場に入る。会場には会社の取引先の社長達も大勢集まってくるし、著名人も数多く出席するので挨拶をしてまわるからな。その後、それぞれの会社社長達が壇上に立って挨拶をする。俺の挨拶の時は君にも隣に立ってもらう。それで……」
ルシアンは事細かに説明し、イレーネは真剣に話を聞く。
しかし、このレセプション会場で折角の話し合いは水の泡になってしまう。
そしてルシアンとイレーネの関係も……大きく変わることになる――
タキシード姿に身を包んだルシアンはエントランスの前でリカルドと一緒にイレーネが現れるのを待っていた。
「ルシアン様、いよいよ今夜ですね。初めて公の場にイレーネさんと参加して婚約と結婚。それに正式な次期当主になられたことを発表される日ですね」
「ああ、そうだな……発表することが盛り沢山で緊張しているよ」
「大丈夫です、いつものように堂々と振る舞っておられればよいのですから」
そのとき――
「どうもお待たせいたしました、ルシアン様」
背後から声をかけられ、ルシアンとリカルドが同時に振り返る。すると、濃紺のイブニングドレスに、金の髪を結い上げたイレーネがメイド長を伴って立っていた。
その姿はとても美しく、ルシアンは思わず見とれてしまった。
「イレーネ……」
「イレーネさん! 驚きました! なんて美しい姿なのでしょう!」
真っ先にリカルドが嬉しそうに声を上げ、ルシアンの声はかき消される。
「ありがとうございます。このようなパーティードレスを着るのは初めてですので、何だか慣れなくて……おかしくはありませんか?」
「そんなことは……」
「いいえ! そのようなことはありません! まるでこの世に降りてきた女神様のような美しさです。このリカルドが保証致します!」
またしても興奮気味のリカルドの言葉でルシアンの声は届かない。
(リカルド! お前って奴は……!)
思わず苛立ち紛れにリカルドを睨みつけるも、当の本人は気付くはずもない。
「はい、本当にイレーネ様はお美しくていらっしゃいます。こちらもお手伝いのしがいがありました」
メイド長はニコニコしながらイレーネを褒め称える。
「ありがとうございます」
その言葉に笑顔で答えるイレーネ。
「よし、それでは外に馬車を待たせてある。……行こうか?」
「はい、ルシアン様」
その言葉にリカルドが扉を開けると、もう目の前には馬車が待機している。
2人が馬車に乗り込むと、リカルドが扉を閉めて声をかけてきた。
「行ってらっしゃいませ、ルシアン様。イレーネさん」
「はい」
「行ってくる」
こうして2人を乗せた馬車は、レセプション会場へ向かって走り始めた。
「そう言えば私、ルシアン様との夜のお務めなんて初めての経験ですわ。何だか今から緊張して、ドキドキしてきました」
イレーネが顔を赤らませる。
「うん、うん。言われてみればたしかにそうだな。だが、くれぐれも他の人達の前で不用意にそんな言葉は口にしないようにしてくれ。……勘違いされかねないからな」
「勘違い……ですか? 何だか良く分かりませんが、ルシアン様の仰るとおり口にしないように致しますね」
「ああ、くれぐれもよろしく頼む」
苦笑しながらルシアンは念を押す。
「それで、まずはレセプション会場に到着してからの手順だが、馬車を降りたら2人で一緒に会場に入る。会場には会社の取引先の社長達も大勢集まってくるし、著名人も数多く出席するので挨拶をしてまわるからな。その後、それぞれの会社社長達が壇上に立って挨拶をする。俺の挨拶の時は君にも隣に立ってもらう。それで……」
ルシアンは事細かに説明し、イレーネは真剣に話を聞く。
しかし、このレセプション会場で折角の話し合いは水の泡になってしまう。
そしてルシアンとイレーネの関係も……大きく変わることになる――