はじめまして、期間限定のお飾り妻です
146話 幼馴染との再会
正午――
イレーネは故郷『コルト』に帰って来た。
『デリア』とは違い、こじんまりした小さな小都市に降り立ったイレーネは大きく深呼吸すると頷いた。
「この空気……懐かしいわ。でも考えてみれば私がこの町を出てから、まだ4カ月しか経過していないのよね……さて。では行きましょう」
小さなボストンバッグを一つだけ持ったイレーネは、ある場所へと向かった――
****
「ルノーさん。お客様がいらしていますよ?」
机に向かって、自分の受け持ちの案件を眺めていたルノーは給仕の少年に声をかけられた。
「俺に客? 誰だろう? 今日は面会の予定は入ってなかったはずだがな……」
すると、少年がルノーに耳打ちしてきた。
「誰ですか? あのブロンドヘアの綺麗な女性は。もしクララさんに見られたら何て言い訳するつもりですか?」
「は? 一体君は何を言ってるんだよ? 大体ブロンドって……え? 待てよ‥…。もしかして、その女性の名はイレーネと言ってなかったか?」
「はい、そうです。何だ。やっぱり知り合いだったんじゃないですか。いや~それにしても綺麗な人ですね……僕、見惚れちゃいましたよ」
しかし、ルノーは少年の話を聞かずに席を立つと扉を見つめた。するとイレーネが笑顔で手を振る姿が遠くに見えた。
(やっぱり、イレーネだ!!)
ルノーは慌ててイレーネの元へ駆け寄った。
「イレーネ!」
「こんにちは、ルノー。4カ月ぶりね」
「そうだな。とりあえずここを出よう!」
イレーネの腕を掴むと、ルノーは足早に建物の外へ連れ出すと振り向いた。
「イレーネ、どうしたんだよ? 連絡も無しに、いきなり来るなんて」
「ごめんなさい。迷惑だったかしら?」
少しだけ落ち込んだ様子で謝罪するイレーネ。
「いや、迷惑なんてことは無いよ。ただ、突然訪ねてきたから驚いただけなんだよ」
そしてルノーは改めてイレーネを見つめる。
4カ月ぶりに会うイレーネは上質なデイ・ドレス姿で、とても美しかった。
(たった4カ月しか経っていないのに……一段と綺麗になったな……やはり、結婚したからだろうか……?)
イレーネの事情を何も知らないルノーは、結婚したとばかり思い込んでいた。
「どうかしたの? 私の顔に何かついている?」
「な、何でもない。それで、何故ここへ来たんだ?」
「ルノーに会いに来たのよ」
のんびりと答えるイレーネ。
「え? お、俺に……?」
(まさか、本当は俺のことが好きで……それで……?)
しかし、次の言葉でルノーは失望することになる。
「あなたに用があったの。ねぇ、ルノー。屋敷の売却はどうなったのかしら? もしまだ買い手がいないのなら、私が買い直したいのだけど」
今のイレーネはお金を持っていた。
ルシアンから渡された小切手、それにリカルドとルシアンから毎月給金を銀行口座に振り込んでもらっていたからだ。
もう、かなりの額になっている。節約家のイレーネは、お金にはほとんど手をつけていなかったのだ。
「え!? か、買い直すって……そんなお金、持っているのか!?」
驚きで目を見開くルノー。
「ええ。自分で買い直して、また住もうと思っていたの」
何しろ、あの屋敷は祖父との思い出が沢山詰まった場所だったからだ。
「だけど君は確かマイスター伯爵と結婚したんだろう?」
「いいえ、結婚はしなかったの。だから、ここへ戻って来たのよ」
そして、寂し気に笑う。どうしてもルシアンのことを考えると、イレーネの心に悲しみが押し寄せてくる。
「そうだったのか……? 色々大変だったんだな?」
「でも、もう大丈夫よ。それで、屋敷を買い直したくてルノーを訪ねたのよ」
すると‥‥‥。
「ごめん! イレーネ!」
突然ルノーは謝罪してきた――
イレーネは故郷『コルト』に帰って来た。
『デリア』とは違い、こじんまりした小さな小都市に降り立ったイレーネは大きく深呼吸すると頷いた。
「この空気……懐かしいわ。でも考えてみれば私がこの町を出てから、まだ4カ月しか経過していないのよね……さて。では行きましょう」
小さなボストンバッグを一つだけ持ったイレーネは、ある場所へと向かった――
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「ルノーさん。お客様がいらしていますよ?」
机に向かって、自分の受け持ちの案件を眺めていたルノーは給仕の少年に声をかけられた。
「俺に客? 誰だろう? 今日は面会の予定は入ってなかったはずだがな……」
すると、少年がルノーに耳打ちしてきた。
「誰ですか? あのブロンドヘアの綺麗な女性は。もしクララさんに見られたら何て言い訳するつもりですか?」
「は? 一体君は何を言ってるんだよ? 大体ブロンドって……え? 待てよ‥…。もしかして、その女性の名はイレーネと言ってなかったか?」
「はい、そうです。何だ。やっぱり知り合いだったんじゃないですか。いや~それにしても綺麗な人ですね……僕、見惚れちゃいましたよ」
しかし、ルノーは少年の話を聞かずに席を立つと扉を見つめた。するとイレーネが笑顔で手を振る姿が遠くに見えた。
(やっぱり、イレーネだ!!)
ルノーは慌ててイレーネの元へ駆け寄った。
「イレーネ!」
「こんにちは、ルノー。4カ月ぶりね」
「そうだな。とりあえずここを出よう!」
イレーネの腕を掴むと、ルノーは足早に建物の外へ連れ出すと振り向いた。
「イレーネ、どうしたんだよ? 連絡も無しに、いきなり来るなんて」
「ごめんなさい。迷惑だったかしら?」
少しだけ落ち込んだ様子で謝罪するイレーネ。
「いや、迷惑なんてことは無いよ。ただ、突然訪ねてきたから驚いただけなんだよ」
そしてルノーは改めてイレーネを見つめる。
4カ月ぶりに会うイレーネは上質なデイ・ドレス姿で、とても美しかった。
(たった4カ月しか経っていないのに……一段と綺麗になったな……やはり、結婚したからだろうか……?)
イレーネの事情を何も知らないルノーは、結婚したとばかり思い込んでいた。
「どうかしたの? 私の顔に何かついている?」
「な、何でもない。それで、何故ここへ来たんだ?」
「ルノーに会いに来たのよ」
のんびりと答えるイレーネ。
「え? お、俺に……?」
(まさか、本当は俺のことが好きで……それで……?)
しかし、次の言葉でルノーは失望することになる。
「あなたに用があったの。ねぇ、ルノー。屋敷の売却はどうなったのかしら? もしまだ買い手がいないのなら、私が買い直したいのだけど」
今のイレーネはお金を持っていた。
ルシアンから渡された小切手、それにリカルドとルシアンから毎月給金を銀行口座に振り込んでもらっていたからだ。
もう、かなりの額になっている。節約家のイレーネは、お金にはほとんど手をつけていなかったのだ。
「え!? か、買い直すって……そんなお金、持っているのか!?」
驚きで目を見開くルノー。
「ええ。自分で買い直して、また住もうと思っていたの」
何しろ、あの屋敷は祖父との思い出が沢山詰まった場所だったからだ。
「だけど君は確かマイスター伯爵と結婚したんだろう?」
「いいえ、結婚はしなかったの。だから、ここへ戻って来たのよ」
そして、寂し気に笑う。どうしてもルシアンのことを考えると、イレーネの心に悲しみが押し寄せてくる。
「そうだったのか……? 色々大変だったんだな?」
「でも、もう大丈夫よ。それで、屋敷を買い直したくてルノーを訪ねたのよ」
すると‥‥‥。
「ごめん! イレーネ!」
突然ルノーは謝罪してきた――