はじめまして、期間限定のお飾り妻です
60話 驚く2人
「イレーネ、この荷物……中に一体何が入っているんだ? 中々の重さだったのだが?」
ルシアンが隣の席に座るイレーネに尋ねる。ちなみに床の上にも、向かい側に座るリカルドの隣にも荷物が置かれている。
「ルシアン様、あまり女性の荷物の中を知ろうとするのは……いかがなものかと」
小声でリカルドに咎められ、軽はずみな質問をしてしまったことに気付くルシアン。
「あ…‥ゴホン! そうだったな。すまない……野暮なことを尋ねてしまって。
(そうだったよな……仮にも女性、男性には知られたくない買い物だってあるだろうし……デリカシーに欠ける質問をしてしまった)
すぐに反省するルシアンだったが、イレーネからは予想外の言葉が飛び出す。
「まぁ、よくぞ聞いて下さいましたわ。まずはどうぞご覧下さい」
イレーネは足元に置かれた紙袋の中から購入した品を取り出した。
「……これは……布地か?」
水色の光沢のある生地を手にしたルシアンが尋ねる。
「はい、そうです。色々な布地がおいてあって、どれも目移りしてしまってつい、色々な布地を買い過ぎてしまいました。今からどのような服を縫おうか、考えるだけで楽しみです」
ニコリと笑うイレーネ。
「何だって? それではここにある荷物は全て布地なのか?」
ルシアンは馬車に置かれた荷物を見渡した。
「ええ、勿論です。布ってまとめ買いすると、結構重たいものですね。こんなに一度に沢山買ったことは無かったので意外に重くて、運ぶのに苦労していたところだったのです。本当に馬車に乗せて頂き、ありがとうございます」
「「……」」
そんなイレーネをルシアンとリカルドは呆れた目で見る。2人がかりで馬車にこれらの荷物を運ぶだけでも重くて大変だったのに、それをイレーネはたった1人で抱えて歩いていたからだ。
(さすがはイレーネさん。本当に知れば知るほど奥が深い方だ)
(信じられん……こんな細い身体の何処にあんな力があるのだ? だが、1年間の契約とはいえ、仮にもマイスター家の嫁になるのだから自覚をしてもらわなければ)
そこでルシアンはイレーネを説得することにした。
「と、とにかくだ。今度から買い物に行く時は誰か人を連れて行くように。仮にもそんな身なりで大量の荷物を抱えて歩いていれば周囲から目立って仕方がないからな」
「あ……言われて見れば確かにそうですね。申し訳ございません……私が浅はかでした」
途端にシュンとなって謝罪するイレーネ。いつになくしおらしい態度に慌てる2人。
「あ、別に怒っているわけでは無いんだ。ただもう少し、わきまえて欲しいと思って注意しただけなんだ」
「ええ、そうです。イレーネさん。その様なドレスを着ているご婦人が大量の荷物を抱えて歩くものではありませんと言っているだけですから」
すると……。
「ええ、お2人のおっしゃりたいことは良く分かりました。これからは買い物に出掛ける際には、今まで自分が着ていた服で出掛けることにいたします。あの服でしたら荷物を抱えて歩いても目立ちませんよね?」
「え?」
「はい?」
的外れなイレーネの言葉に唖然とする2人。
(駄目だ……ズレている。根本的に俺の考えとズレている)
思わず、頭を抱えるルシアン。その様子を見たリカルドは、咄嗟に話を変えることにした。
「そ、そう言えばイレーネさん。本日のお昼はどこでお召し上がりになったのですか? ダイニングルームですか? それとも自室ですか?」
「いいえ? 駅の近くのパン屋さんで頂きましたけど?」
「な、何だって(ですって)!!」
イレーネの回答に、2人の驚きの声が馬車内に響き渡った――
ルシアンが隣の席に座るイレーネに尋ねる。ちなみに床の上にも、向かい側に座るリカルドの隣にも荷物が置かれている。
「ルシアン様、あまり女性の荷物の中を知ろうとするのは……いかがなものかと」
小声でリカルドに咎められ、軽はずみな質問をしてしまったことに気付くルシアン。
「あ…‥ゴホン! そうだったな。すまない……野暮なことを尋ねてしまって。
(そうだったよな……仮にも女性、男性には知られたくない買い物だってあるだろうし……デリカシーに欠ける質問をしてしまった)
すぐに反省するルシアンだったが、イレーネからは予想外の言葉が飛び出す。
「まぁ、よくぞ聞いて下さいましたわ。まずはどうぞご覧下さい」
イレーネは足元に置かれた紙袋の中から購入した品を取り出した。
「……これは……布地か?」
水色の光沢のある生地を手にしたルシアンが尋ねる。
「はい、そうです。色々な布地がおいてあって、どれも目移りしてしまってつい、色々な布地を買い過ぎてしまいました。今からどのような服を縫おうか、考えるだけで楽しみです」
ニコリと笑うイレーネ。
「何だって? それではここにある荷物は全て布地なのか?」
ルシアンは馬車に置かれた荷物を見渡した。
「ええ、勿論です。布ってまとめ買いすると、結構重たいものですね。こんなに一度に沢山買ったことは無かったので意外に重くて、運ぶのに苦労していたところだったのです。本当に馬車に乗せて頂き、ありがとうございます」
「「……」」
そんなイレーネをルシアンとリカルドは呆れた目で見る。2人がかりで馬車にこれらの荷物を運ぶだけでも重くて大変だったのに、それをイレーネはたった1人で抱えて歩いていたからだ。
(さすがはイレーネさん。本当に知れば知るほど奥が深い方だ)
(信じられん……こんな細い身体の何処にあんな力があるのだ? だが、1年間の契約とはいえ、仮にもマイスター家の嫁になるのだから自覚をしてもらわなければ)
そこでルシアンはイレーネを説得することにした。
「と、とにかくだ。今度から買い物に行く時は誰か人を連れて行くように。仮にもそんな身なりで大量の荷物を抱えて歩いていれば周囲から目立って仕方がないからな」
「あ……言われて見れば確かにそうですね。申し訳ございません……私が浅はかでした」
途端にシュンとなって謝罪するイレーネ。いつになくしおらしい態度に慌てる2人。
「あ、別に怒っているわけでは無いんだ。ただもう少し、わきまえて欲しいと思って注意しただけなんだ」
「ええ、そうです。イレーネさん。その様なドレスを着ているご婦人が大量の荷物を抱えて歩くものではありませんと言っているだけですから」
すると……。
「ええ、お2人のおっしゃりたいことは良く分かりました。これからは買い物に出掛ける際には、今まで自分が着ていた服で出掛けることにいたします。あの服でしたら荷物を抱えて歩いても目立ちませんよね?」
「え?」
「はい?」
的外れなイレーネの言葉に唖然とする2人。
(駄目だ……ズレている。根本的に俺の考えとズレている)
思わず、頭を抱えるルシアン。その様子を見たリカルドは、咄嗟に話を変えることにした。
「そ、そう言えばイレーネさん。本日のお昼はどこでお召し上がりになったのですか? ダイニングルームですか? それとも自室ですか?」
「いいえ? 駅の近くのパン屋さんで頂きましたけど?」
「な、何だって(ですって)!!」
イレーネの回答に、2人の驚きの声が馬車内に響き渡った――