はじめまして、期間限定のお飾り妻です
93話 謝るゲオルグ
「婚約者には、包み隠さず何でも打ち明けるのが筋じゃないか? 俺だったらそうするね。それが相手に対する誠意ってものだと思わないか?」
身を乗り出すようにイレーネに語るゲオルグ。
「そういうものなのでしょうか?」
首を傾げ、反応が鈍いイレーネにゲオルグは益々不信感を抱く。
(何だって言うんだ? そんなにこの話に興味を持てないのか? やはり、2人の婚約の話は嘘なんじゃないだろうか?)
一方のイレーネはゲオルグの話を冷静に考えていた。
(そう言えば、リカルド様に少し聞いたことがあるわ。確かゲオルグ様は何度もお相手の女性を取っ替え引っ替えしているって。それはやはり、過去の女性遍歴を交際相手に話してきたからじゃないかしら。きっとそうね、間違いないわ)
「まぁいい。誰だって自分の婚約者が過去にどんな相手と交際していたか気になるだろうからな……ルシアンが話していないなら、俺が代わりに教えてやろう。どうだ? 知りたいだろう?」
「いいえ? 別に知りたくはありませんけど?」
「やっぱりな、そうくると思ったよ。誰だって知りた……ええっ!? い、今何と言ったんだ!」
「はい、別に知りたくはありませんと申し上げました」
何しろ、イレーネは1年間という期間限定でルシアンの妻になる雇用契約を結んだだけの関係。そこには一切の恋愛感情など存在しないのだから。
「クックックッ……そうか……やはり俺の思ったとおりだったな……」
もはや心の内を隠すこともなく、不敵に笑うゲオルグ。
「つまりだ、イレーネ嬢。君はルシアンに頼まれて婚約したのだろう!? 何しろ爺さんが提案した次期当主になる条件は結婚なのだからな! どうだ? 違うか?」
「はい、違います」
「な、何!? 違うのか!」
思わず椅子からずり落ちそうになるゲオルグ。そういうところはルシアンと似ている。
「ええ、違います。ルシアン様に頼まれてはいません」
最初に頼んできたのはリカルド。イレーネは決して嘘などついてはいない。
「そうか、違うのか……では俺の見込み違いだったというわけか……? だとしたら何故ルシアンが以前交際していた女性のことを知りたくないのだ?」
「ルシアン様に関するお話は、本人から直接聞きたいからです。私に話していないということは、話す必要が無いからなのではないでしょうか? それなのに無理に知りたいとは思いませんから」
(私はお給料を頂いている身分だし、どうせ1年後にはルシアン様との関係は終わるのだから、聞いても意味のない話だもの)
つまり、イレーネにとってはルシアンが以前何処の誰と付き合っていようが興味のない話であったのだ。
しかし、ゲオルグはそうとは取らなかった。
「そうか……つまり、イレーネ嬢はそれだけルシアンのことを信じているっていうことなんだな……。悪かった、つい無粋な真似をしてしまった。俺はてっきり、2人の婚約はルシアンの策略だとばかり思っていた。疑うような真似をしてすまなかった。どうか許して欲しい」
「いいえ、どうぞお気になさらないで下さい。過ちは誰にでもあることですから」
謝ってくるゲオルグにイレーネは笑顔で答える。
何故なら、最初に策略を立てたのは他ならぬリカルドなのだから――
身を乗り出すようにイレーネに語るゲオルグ。
「そういうものなのでしょうか?」
首を傾げ、反応が鈍いイレーネにゲオルグは益々不信感を抱く。
(何だって言うんだ? そんなにこの話に興味を持てないのか? やはり、2人の婚約の話は嘘なんじゃないだろうか?)
一方のイレーネはゲオルグの話を冷静に考えていた。
(そう言えば、リカルド様に少し聞いたことがあるわ。確かゲオルグ様は何度もお相手の女性を取っ替え引っ替えしているって。それはやはり、過去の女性遍歴を交際相手に話してきたからじゃないかしら。きっとそうね、間違いないわ)
「まぁいい。誰だって自分の婚約者が過去にどんな相手と交際していたか気になるだろうからな……ルシアンが話していないなら、俺が代わりに教えてやろう。どうだ? 知りたいだろう?」
「いいえ? 別に知りたくはありませんけど?」
「やっぱりな、そうくると思ったよ。誰だって知りた……ええっ!? い、今何と言ったんだ!」
「はい、別に知りたくはありませんと申し上げました」
何しろ、イレーネは1年間という期間限定でルシアンの妻になる雇用契約を結んだだけの関係。そこには一切の恋愛感情など存在しないのだから。
「クックックッ……そうか……やはり俺の思ったとおりだったな……」
もはや心の内を隠すこともなく、不敵に笑うゲオルグ。
「つまりだ、イレーネ嬢。君はルシアンに頼まれて婚約したのだろう!? 何しろ爺さんが提案した次期当主になる条件は結婚なのだからな! どうだ? 違うか?」
「はい、違います」
「な、何!? 違うのか!」
思わず椅子からずり落ちそうになるゲオルグ。そういうところはルシアンと似ている。
「ええ、違います。ルシアン様に頼まれてはいません」
最初に頼んできたのはリカルド。イレーネは決して嘘などついてはいない。
「そうか、違うのか……では俺の見込み違いだったというわけか……? だとしたら何故ルシアンが以前交際していた女性のことを知りたくないのだ?」
「ルシアン様に関するお話は、本人から直接聞きたいからです。私に話していないということは、話す必要が無いからなのではないでしょうか? それなのに無理に知りたいとは思いませんから」
(私はお給料を頂いている身分だし、どうせ1年後にはルシアン様との関係は終わるのだから、聞いても意味のない話だもの)
つまり、イレーネにとってはルシアンが以前何処の誰と付き合っていようが興味のない話であったのだ。
しかし、ゲオルグはそうとは取らなかった。
「そうか……つまり、イレーネ嬢はそれだけルシアンのことを信じているっていうことなんだな……。悪かった、つい無粋な真似をしてしまった。俺はてっきり、2人の婚約はルシアンの策略だとばかり思っていた。疑うような真似をしてすまなかった。どうか許して欲しい」
「いいえ、どうぞお気になさらないで下さい。過ちは誰にでもあることですから」
謝ってくるゲオルグにイレーネは笑顔で答える。
何故なら、最初に策略を立てたのは他ならぬリカルドなのだから――