はじめまして、期間限定のお飾り妻です
97話 ブリジットからの誘い
イレーネとブリジットは2人でお茶を飲みながら応接室で話をしていた。
「それにしても絵葉書を貰った時には驚いたわ。まさかルシアン様のお祖父様が暮らしているお城に滞在していたなんて」
「驚かせて申し訳ございません。ですが、お友達になって下さいとお願いしておきながら自分の今居る滞在先をお伝えしておかないのは失礼かと思いましたので」
ニコニコしながら答えるイレーネ。
「ま、まぁそこまで丁寧に挨拶されるとは思わなかったわ。あなたって意外と礼儀正しいのね。それで? 『ヴァルト』は楽しかったのかしら?」
「ええ、とても楽しかったです。とても自然が美しい場所ですし、情緒ある町並みも素敵でした。おしゃれな喫茶店も多く、是非ブリジット様とご一緒してみたいと思いました」
「あら? 私のことを思い出してくれたのね?」
ブリジットはまんざらでもなさそうに笑みを浮かべる。
「ええ、勿論です。何しろブリジット様は素敵な洋品店に連れて行っていただいた恩人ですから」
「そ、そうかしら? あなったて中々人を見る目があるわね。実は今日ここへ来たのは他でもないわ。実は偶然にもオペラのチケットが3枚手に入ったのよ。開催日は3か月後なのだけど、世界中に有名な歌姫が出演しているのよ。彼女の登場するオペラは大人気で半年先までチケットが手に入らないと言われているくらいなの」
ブリジットがテーブルの上にチケットを置いた。
「まぁ! オペラですか!? 凄いですわね! チケット拝見させて頂いてもよろしいですか?」
片田舎育ち、ましてや貧しい暮らしをしていたイレーネは当然オペラなど鑑賞したことはない。
「ええ、いいわよ」
「では失礼致します」
イレーネはチケットを手に取り、まじまじと見つめる。
「『令嬢ヴィオレッタと侯爵の秘密』というオペラですか……何だか題名だけでもドキドキしてきますね」
「ええ。恋愛要素がたっぷりのオペラなのよ。女性たちに大人気な小説をオペラにしたのだから、滅多なことでは手に入れられない貴重なチケットなの。これも私の家が名家だから手に入ったようなものよ」
自慢気に語るブリジット。
「流石は名門の御令嬢ですね」
イレーネは心底感心する。
「ええ、それでなのだけど……イレーネさん、一緒にこのオペラに行かない? 友人のアメリアと3人で。そのために、今日はここへ伺ったのよ」
「え? 本当ですか!? ありがとうございます! ブリジット様!」
イレーネは立ち上がると、両手でブリジットの手を握りしめる。
「キャア! ほ、本当にあなたって人は驚かせる行動を取るわね!」
「あ……申し訳ございません。あまりにも嬉しくてつい……」
ブリジットからすぐに離れるイレーネ。
「まぁいいわ。このチケットはあなたに預けておくわね。それでは私はこの辺で帰るわね」
席から立ち上がるブリジット。
「え? もうお帰りになるのですか?」
「ええ。チケットを渡しに来ただけだから。それに『ヴァルト』から帰ってきたばかりで疲れているでしょうから」
「お気遣い、ありがとうございます。それではお見送りさせて下さい」
「ありがとう」
そしてイレーネはブリジットを見送るために席を立った。
****
ブリジットは馬車に乗り込むと、窓から顔を出した。
「イレーネさん、今度私主催のお茶会を開く予定だから招待状を送るわね」
「本当ですか? ありがとうございます」
笑顔でお礼を述べるイレーネに頷くとブリジットは頷き、御者に命じた。
「出して頂戴」
その言葉に馬車は音を立てて走り出し、イレーネは馬車が見えなくなるまで見送るとポツリと呟いた。
「私の人生でオペラを観る日が来るなんて……フフフ。今からとても楽しみだわ」
そしてイレーネは笑みを浮かべた――
「それにしても絵葉書を貰った時には驚いたわ。まさかルシアン様のお祖父様が暮らしているお城に滞在していたなんて」
「驚かせて申し訳ございません。ですが、お友達になって下さいとお願いしておきながら自分の今居る滞在先をお伝えしておかないのは失礼かと思いましたので」
ニコニコしながら答えるイレーネ。
「ま、まぁそこまで丁寧に挨拶されるとは思わなかったわ。あなたって意外と礼儀正しいのね。それで? 『ヴァルト』は楽しかったのかしら?」
「ええ、とても楽しかったです。とても自然が美しい場所ですし、情緒ある町並みも素敵でした。おしゃれな喫茶店も多く、是非ブリジット様とご一緒してみたいと思いました」
「あら? 私のことを思い出してくれたのね?」
ブリジットはまんざらでもなさそうに笑みを浮かべる。
「ええ、勿論です。何しろブリジット様は素敵な洋品店に連れて行っていただいた恩人ですから」
「そ、そうかしら? あなったて中々人を見る目があるわね。実は今日ここへ来たのは他でもないわ。実は偶然にもオペラのチケットが3枚手に入ったのよ。開催日は3か月後なのだけど、世界中に有名な歌姫が出演しているのよ。彼女の登場するオペラは大人気で半年先までチケットが手に入らないと言われているくらいなの」
ブリジットがテーブルの上にチケットを置いた。
「まぁ! オペラですか!? 凄いですわね! チケット拝見させて頂いてもよろしいですか?」
片田舎育ち、ましてや貧しい暮らしをしていたイレーネは当然オペラなど鑑賞したことはない。
「ええ、いいわよ」
「では失礼致します」
イレーネはチケットを手に取り、まじまじと見つめる。
「『令嬢ヴィオレッタと侯爵の秘密』というオペラですか……何だか題名だけでもドキドキしてきますね」
「ええ。恋愛要素がたっぷりのオペラなのよ。女性たちに大人気な小説をオペラにしたのだから、滅多なことでは手に入れられない貴重なチケットなの。これも私の家が名家だから手に入ったようなものよ」
自慢気に語るブリジット。
「流石は名門の御令嬢ですね」
イレーネは心底感心する。
「ええ、それでなのだけど……イレーネさん、一緒にこのオペラに行かない? 友人のアメリアと3人で。そのために、今日はここへ伺ったのよ」
「え? 本当ですか!? ありがとうございます! ブリジット様!」
イレーネは立ち上がると、両手でブリジットの手を握りしめる。
「キャア! ほ、本当にあなたって人は驚かせる行動を取るわね!」
「あ……申し訳ございません。あまりにも嬉しくてつい……」
ブリジットからすぐに離れるイレーネ。
「まぁいいわ。このチケットはあなたに預けておくわね。それでは私はこの辺で帰るわね」
席から立ち上がるブリジット。
「え? もうお帰りになるのですか?」
「ええ。チケットを渡しに来ただけだから。それに『ヴァルト』から帰ってきたばかりで疲れているでしょうから」
「お気遣い、ありがとうございます。それではお見送りさせて下さい」
「ありがとう」
そしてイレーネはブリジットを見送るために席を立った。
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ブリジットは馬車に乗り込むと、窓から顔を出した。
「イレーネさん、今度私主催のお茶会を開く予定だから招待状を送るわね」
「本当ですか? ありがとうございます」
笑顔でお礼を述べるイレーネに頷くとブリジットは頷き、御者に命じた。
「出して頂戴」
その言葉に馬車は音を立てて走り出し、イレーネは馬車が見えなくなるまで見送るとポツリと呟いた。
「私の人生でオペラを観る日が来るなんて……フフフ。今からとても楽しみだわ」
そしてイレーネは笑みを浮かべた――