ゆらりとときがきざむとき

【終幕】

 期末試験は、散々たる結果となった。
 ダンスの練習ばかりに気を取られ、学生としても本分を疎かにしてしまった付けは、こんなところで姿かたちを現してしまったのだ。

「四月には高校生になるのに、なんでレポート……」

 由良理は、ため息を吐いていた。

「文句はいいから、早く続きを書け」

 雅也の罵声が飛ぶ。

「お姉ちゃんはバカだから勉強しても意味がないよー」

 葵の声も。

「ほらみろ、駅前のアニメショップでフィギュア観賞をしていた方が時間を有効に使えたではないか」

 さらに京介がぼやく。

「あはは、なんか面白いね」

 そして、最後に十希が笑みを浮かべながら答える。
 五人は今、由良理の狭い部屋の中にいる。期末試験で赤点を五つ取ってしまった由良理の卒業課題でもあるレポートの手伝いをするために。

「これじゃ手伝いに来たんじゃなくて、邪魔しに来てるのと同じよ……」
「阿呆、大勢で勉強した方が楽しいではないか」
「そうだ。少しは感謝しろよな」

 雅也も同調する。

「分からないところがあったら言ってね」

 十希が優しく告げる。

「もちろんです!」
「返事してる暇があったら早く書け!」

 雅也に野次られた。

 レポートは大変だが、もうすぐ卒業式。
 そして、待ちに待った冬休みである。
 そのあとには、高校生活が待っている。

 由良理は思った。今の関係を少しでも進展させよう。十希との仲をよくすることができれば、高校生活もきっと楽しくなる、と。

 だから、由良理は頑張る。
 ジャズダンサーである彼に負けないくらい、ダンスを好きになろうと――。

(了)
< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る
表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop