お七~天涯の少女~
「ええっ!お見合い?」
ある日の夜のこと。父・太兵衛と母・おきみに部屋に呼び出されたお七は、太兵衛の口から出た言葉に、すっとんきょうな声を上げた。
お七の驚きように、おきみは慌ててお七の口をふさぐ。
「こら、もう夜中なんだから大声出すんじゃないよ!」
「ご、ごめんなさいおかっつぁん・・・でも、一体どんな方が?」
母に注意されて肩をすくめたお七は、座りなおして太兵衛に問う。
お七に見つめられた太兵衛は、太い腕を腕組みしてから気難しい顔で口を開いた。
「・・・大工の熊蔵んとこのせがれがな、お前と同い年なんだそうだ。熊蔵はものすごくお前のことを気に入っていてだな・・・お七ちゃんが来てくれるならうちも安泰だ、と言って聞かんのだ」
そう言って、太兵衛は困ったような顔をしてお七を見る。どうやら、断りきれない縁談らしい。
「・・・お七、お前ももう16なんよ。そろそろお相手を考えないといけない歳なんだけどね・・・」
太兵衛の傍らのおきみも、願うような視線をお七に送る。
すると、お七はきょとんとした顔をして、当たり前のように言った。
「じゃあおとっつぁん、その縁談断っといて」
予想外のお七の言葉に、太兵衛とおきみは目を見張る。そしてそのままもう用は済んだとばかりに部屋を出て行こうとするお七を、慌てて引き止めた。
「ちょ、ちょっと待ちなさい、お七!本当にお断りするつもりかい?」
お七に身を乗り出したおきみが、お七に懇願するように言う。
「だぁっておかっつぁん、顔も知らない人と結婚なんてできないわよ。私は、ちゃんと自分で選んだ人と結婚するから。じゃね」
おきみの願いもむなしく、お七は軽い足取りで部屋を出て行く。後に残された太兵衛とおきみは、ハアッと深いため息をついた。
「本当に、あの子には困ったこと・・・」
「まあ、育ち盛りの娘だ。色恋沙汰に現を抜かすのも、仕方あるまい」
そう言って太兵衛は、また一つため息をついた。
ある日の夜のこと。父・太兵衛と母・おきみに部屋に呼び出されたお七は、太兵衛の口から出た言葉に、すっとんきょうな声を上げた。
お七の驚きように、おきみは慌ててお七の口をふさぐ。
「こら、もう夜中なんだから大声出すんじゃないよ!」
「ご、ごめんなさいおかっつぁん・・・でも、一体どんな方が?」
母に注意されて肩をすくめたお七は、座りなおして太兵衛に問う。
お七に見つめられた太兵衛は、太い腕を腕組みしてから気難しい顔で口を開いた。
「・・・大工の熊蔵んとこのせがれがな、お前と同い年なんだそうだ。熊蔵はものすごくお前のことを気に入っていてだな・・・お七ちゃんが来てくれるならうちも安泰だ、と言って聞かんのだ」
そう言って、太兵衛は困ったような顔をしてお七を見る。どうやら、断りきれない縁談らしい。
「・・・お七、お前ももう16なんよ。そろそろお相手を考えないといけない歳なんだけどね・・・」
太兵衛の傍らのおきみも、願うような視線をお七に送る。
すると、お七はきょとんとした顔をして、当たり前のように言った。
「じゃあおとっつぁん、その縁談断っといて」
予想外のお七の言葉に、太兵衛とおきみは目を見張る。そしてそのままもう用は済んだとばかりに部屋を出て行こうとするお七を、慌てて引き止めた。
「ちょ、ちょっと待ちなさい、お七!本当にお断りするつもりかい?」
お七に身を乗り出したおきみが、お七に懇願するように言う。
「だぁっておかっつぁん、顔も知らない人と結婚なんてできないわよ。私は、ちゃんと自分で選んだ人と結婚するから。じゃね」
おきみの願いもむなしく、お七は軽い足取りで部屋を出て行く。後に残された太兵衛とおきみは、ハアッと深いため息をついた。
「本当に、あの子には困ったこと・・・」
「まあ、育ち盛りの娘だ。色恋沙汰に現を抜かすのも、仕方あるまい」
そう言って太兵衛は、また一つため息をついた。