お七~天涯の少女~
真っ黒な、それでいて澄んだ瞳。

薄くて、引き締まった唇。

雪のように白くて、高い鼻。

ここまで来て、ようやくお七は、自分を見つめている男が役者のように美しい顔立ちをしていることに気づいた。

他の二人も美しいが、この男が一番飛びぬけている。

お七は、生まれて初めてこんな美しい男に見つめられているという恥ずかしさから、思わず目を逸らした。

「・・・お願いします」

小さな声でそうつぶやくと、男の方もそれ以上見つめてはこなかった。

お七が両手を添えてやっと持ち上げられるほどの大きな風呂敷包みを、男は片手で軽々と持ち上げ、暗い本堂の中へと消え去った。

「お七さま、お七さまっ」

ふいに、お美代がコソコソと傍らに近寄ってくる。

いつものお美代らしくない不自然な素振りに、お七は首をかしげた。

「どうしたの?お美代」

興奮しているのか、心なしかお美代の息は上がっている。好奇心いっぱいのその瞳が何を言おうとしているのか、年の近いお七にはすぐにわかった。

「お美代。違うわよ。そんな人じゃない」

「でも、でもですよ、お七さま。あのお方、じっとお七さまのことを見つめておいでではなかったですか。ひょっとすると、ひょっとするやも・・・」

「お美代!」

突然のお七の大声に、お美代はビクッと肩をすくめた。

「私は、一目ぼれなんかしない。それに、あの男は寺小姓よ、寺小姓。立場の違いはわかるでしょう?」


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