秘めたるイケボは恋の予感?!
そんな不思議で新鮮なお昼も,数時間がたてば放課後に変わる。
いつにも増して急ぐ私は,またいつもの空き教室へと飛び込んだ。
「ごめん! 今日はこれでお願いします!!」
同時に高知くんへと漫画を渡す。
「いいけど。遠野はなんで今日」
「だって!!!! 用事あるって言ってるのに,若菜くんが」
「若菜が?」
ぴくりと高知くんの眉が動いた。
それを見て,その時のことを思い出してちょっぴり怒っていた気持ちが萎んでいく。
「デートついでに案内してってしつこくて。ふざけてないで退いてって言ったのに……どいてくれないんだもん」
ね,私のせいじゃないでしょ?
だから,怒んないで。
そんな気持ちで高知くんを見る。
2人は仲良しに見えるのに,どうしてすぐそんな顔になるの?
「遠野」
椅子に座ったままの高知くんを見下ろすと,眼鏡が手前に少しずれた。
いっそ一回外そうと右手を持ち上げると,それを制するように高知くんがそっと私のメガネを外す。
「あ,ありが」
「なんで俺は高知で若菜は名前なわけ?」
返してくれると思ったメガネは邪魔とでも言わんばかりに奪われて,私はそんな意味不明な問い掛けをされた。