秘めたるイケボは恋の予感?!



「だってそれは別に……若菜くんが私を名前で呼ぶから……それに高知くんだって私のこと遠野って呼ぶじゃないですかっ」

「う……でも俺は時々だろうと遠野に敬語使ったりしないし」

「それは,でも……ううん! じゃあそれもやめるから,気になるなら今私のこと名前で呼んでみてよ! 今さらはずかしいで」



あれ……思わず何か反論しちゃったけど。

この展開って,何か,どう転んでも。



「遥菜」

「え」

「遥菜」



遠野が名前に変わるだけ。

なのに,正直そんな気はしたけど。

その,特別なイケボで。



「呼び捨てはダメです! 名字とは違います!! さんかちゃんを……いや,ちゃんもだめ!!」



もっとダメなのは,赤らんだまま見つめてくるその表情。



「敬語,戻ってる。それで遥菜は高知のままなの? どうなの? ってかなんであんなに若菜となかいいの? 意味分かんないんだけど」

「質問と注文が多い! はいこれ,これワンシーン読んでくれたらそれごとに答えます!」



初那と名前で呼ばせられることも,問い詰められることにも耐えられなくて,私は適当なシーンを開いた漫画を突きつける。

しぶしぶとそれを手に取る高知くんはそれはもう様になっていて。

拗ねたテンションのまま読み始めた。

それもそのはず,たまたま開いたそのページは,ヒーローが機嫌悪く甘えているところ。

正直心臓の音で耳が痛くなるくらい……

ベストマッッチ!!!!

はぅあっと心の中でだけ崩れ落ちる。

高知くんにキャラが憑依していると言っても過言ではない。
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