秘めたるイケボは恋の予感?!
「やばいね,俺たち。傍目で見たらそーとーなバカップルだよ」
いーの?
そう茶化すように,甘く問いかけてくる。
確かに,そうなのかもしれないけど。
いいよ,今なら。
ぽんぽんと背中を2度叩いて示す。
若菜くんは仕方なさそうに息をはいて,私の肩におでこを乗せた。
「あーやばいなあほんとに。なんなの,こんなの初那に怒られるやつじゃん。でも……まあ,一回くらい。いいんだよね?」
初めて,若菜くんはしっかりと私を抱き締める。
思わず身を捩ってしまうくらい,子供みたいに密着された。
そして,それを支えると,ぱっとその身を離す。
「じゃあ俺戻るよ。時間もないしね」
「あ,うん。がんばって」
「だねーこっから数時間,早く上がれるように頑張ろー」
目元をぬぐい,若菜くんは誤魔化すように伸びをした。
そして決意を決めるかのように私を向いて,仕事へと向かう姿勢を見せる。
「すきだよ,遥菜ちゃん。台本届けてくれてありがとね~。俺は戻るから,また明日」
……す?
「あ……うん。また,ね?」
さらりと,色んなことを言われて。
友達としてだとは分かっていても,流石に照れる。
「えーと,駅は」
友達は友達でも,若菜くんも男の子なんだな。
そんな風に思って顔を扇ぐ。
私は帰るために,駅へと向かった。