秘めたるイケボは恋の予感?!



「やばいね,俺たち。傍目で見たらそーとーなバカップルだよ」



いーの?

そう茶化すように,甘く問いかけてくる。

確かに,そうなのかもしれないけど。

いいよ,今なら。

ぽんぽんと背中を2度叩いて示す。

若菜くんは仕方なさそうに息をはいて,私の肩におでこを乗せた。



「あーやばいなあほんとに。なんなの,こんなの初那に怒られるやつじゃん。でも……まあ,一回くらい。いいんだよね?」



初めて,若菜くんはしっかりと私を抱き締める。

思わず身を捩ってしまうくらい,子供みたいに密着された。

そして,それを支えると,ぱっとその身を離す。



「じゃあ俺戻るよ。時間もないしね」

「あ,うん。がんばって」

「だねーこっから数時間,早く上がれるように頑張ろー」



目元をぬぐい,若菜くんは誤魔化すように伸びをした。

そして決意を決めるかのように私を向いて,仕事へと向かう姿勢を見せる。



「すきだよ,遥菜ちゃん。台本届けてくれてありがとね~。俺は戻るから,また明日」



……す?



「あ……うん。また,ね?」



さらりと,色んなことを言われて。

友達としてだとは分かっていても,流石に照れる。



「えーと,駅は」



友達は友達でも,若菜くんも男の子なんだな。

そんな風に思って顔を扇ぐ。

私は帰るために,駅へと向かった。




< 22 / 26 >

この作品をシェア

pagetop