中古物件
それなら鍵を持っていても納得できる。
男はなにかの事情で居場所がなくなってしまい、ここへ戻ってきたんだろう。

だけどこの家は昨日から太一が暮らしていたということだ。
太一は肩の力が抜けるのを感じながら男を見た。

男は同い年くらいのはずだけれど、太一よりも随分と疲れて見える。
一軒家を建てたけれど離婚してしまった男は、その後も色々な人生があったんだろう。

だけどここはもう俺の家だ。
富永祐という男の家ではなくなっている。

「申し訳ないんですが、この家はもうあなたの家じゃないんです」
「えぇ、はい。そうですよね……」

男も理解はしていたのだろう。
うつむいて、何度も何度も頷いている。
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