中古物件
居座る
翌日は昨日よりももっと早くに帰宅した。
それでも玄関前で嫌な予感を覚えて太一は立ち止まっていた。

リビングの電気は消えている。
が、家の中からかすかな話声が聞こえてくるのだ。

テレビの電源をつけっぱなしにしてしまっただろうか。
そう思うが、そんなはずはないと思い直す。

富永祐の件があってからその辺は慎重になっている。
出かける前には戸締まり火の元電気のチャックを2階ずつした。

それでも音が聞こえてくるということは……太一はそっと手を伸ばしたドアノブを握りしめた。
勇気を振り絞り、そのままドアを引く。

鍵を開けていないドアはスムーズに外へと開き、同時に太一は舌打ちをした。
まただ。
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