中古物件
また薄汚れた運動靴がそこにある。
昨日あれだけ怒鳴って追い出したのに戻ってくるなんてどういう神経なんだ!

怒りでカッと熱くなってくるのをどうにか鎮めて家に上がる。
わざと大きな足音を立てて廊下を歩くと、男の方から出てきた。

なぜか風呂場のドアから出てきて太一は思わず立ち止まった。
「あ、あの、お風呂掃除しておきました」

おずおずとそう言ったのはもちろん富永だ。
富永の手には風呂用のブラシが握られている。

「掃除をしてただと?」
掃除をしたから自分はこの家の住人だとでも言うつもりだろうか?

どんな図々しい言葉が出てくるか腕組みをして待っていると、富永が突然その場にヒザをついて土下座してきた。
「1日だけでいいから、ここに泊めてください!」

その言葉に拍子抜けしたことは事実だった。
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