中古物件
弱者を演じて人の懐に入り込もうとしていることも、全部。
男は昼間外出しているが、冨永が言っていたようなエンジニアをしているわけではなかった。

あれは家にいる冨永がきっと見るだろう場所にわざと置いておいたフェイクだ。
男が昼間家を出るのは冨永を再度この家にこさせるため。

きっとあの男なら再び現れると思っていたから、わざと家をあけた。
鍵の付け替えはしないと怪しまれるからしたまでだけれど、3日後という猶予があるので十分だと思った。

男は大金を手にしていた。
それも偽名で作った銀行に保管してある。

働く必要もなく、昼間はパチンコなどに行ってダラダラと過ごすだけだ。
周りに怪しまれないようにスーツを着込んで家を出る。

乗っているのは軽のワゴン車だ。
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