中古物件
だからこそ、今まで組織の連中に見つかることなく逃げてきたのだから。
だから男はこの生活を変えるつもりはなかった。

パチンコを打って、安い定食屋で昼を食べて、そして夜になって帰宅する。
近所から見ればただのサラリーマンにしか見えないはずだ。

食事を終えて外へ出るともうパチンコを打つ気は失せていて、そのまま図書館へと足を伸ばした。
このあたりには漫画喫茶というものがないので、男はよく図書館へ行って本を読む。

小説や小難しい哲学書が多い中、一番奥の棚には漫画本も豊富に取り揃えられている。
その中から一冊マンガ本を抜き取ってテーブルについた。

まだ時間が早いせいか、図書館の利用者は少ない。
夕方になれば学生たちで賑わってくるから、それまでが男の時間だった。

男が漫画を読むようになったのはこの生活に入ってからだった。
金は十分ある。
だけど暮らす場所は点々と移動しないといけない。

そんなとき、図書館や漫画喫茶などで時間をつぶすのはうってつけだったのだ。
漫画喫茶の場合はそのまま宿泊することもできるから、随分と利用した。
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