初めまして、新しい一日
でもこの学校を選んだのは自分の意思だ。三年間ここで頑張るしかない。私は鞄を手に立ち上がる。そろそろ帰ろう。

教室を出て廊下を歩く。そういえば、私がいる二階の奥には美術室があるんだっけ。少し気になってきた。

(ちょっとどんな雰囲気が見てみようかな……)

高校の美術室はどんな部屋なんだろう。絵がたくさんあるのかな。それとも彫刻が置かれているのかな。ドキドキしながら美術室に近付く。

「ーーークソッ!」

美術室のドアを開けようとした刹那、中から声が聞こえてきた。誰かいるみたいだ。中にいるのはきっと入学したばかりの一年生ではないだろう。

少しだけドアを開けて中を覗く。一人の男子生徒がキャンバスに絵を描いていた。学ランを脱いでシャツの袖を捲っている。明るめの茶色の髪を持った生徒は、悔しそうな顔で絵を見ていた。

「何でうまく描けないんだ!」

少し見えた絵は、木の上で眠る猫の絵だった。その絵を見た瞬間、私は声を上げてしまいそうになって必死に堪える。だってその絵はとても上手だったから!
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