初めまして、新しい一日
「あの、盗み見してしまってすみませんでした。今日美術コースで入学したばかりで、美術室がどんな感じなのか気になって……」

ボソボソと謝罪と言い訳をした後、私は帰ろうとした。でもすぐに腕を掴まれて引き止められる。

「……俺も怒って悪かったよ。ちょっと絵が上手く描けなくてさ。八つ当たりしちまった。美術室見てけよ」

「えっ?いいんですか?」

「おう。そんな顔で帰ったら俺がいじめたみたいじゃねぇか!」

そう言って男子生徒は美術室の中へ入っていった。私もそのあとに続く。高校の美術室は中学の美術室よりずっと広い。教室二つ分は余裕である。

広々とした美術室は先輩たちが描いたのであろう絵や彫刻が並んでいる。それを一つ一つ見てから男子生徒の方を見ると、彼はまたキャンパスを見ていた。私は近付いてその絵を見る。うん、やっぱり素敵な絵だ。

緑の葉が生い茂る木から伸びた太い枝。その枝の上で真っ白な猫が気持ちよさそうに寝ている。葉っぱの隙間から漏れる木漏れ日も丁寧に描かれていて、つい見入ってしまう。
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