初めまして、新しい一日
「綺麗な絵ですね」

私がそう言うと、悔しそうに男子生徒は唇を噛み締める。この絵の仕上がりに満足していないみたいだ。

「俺より上手い奴はここじゃ何人もいるよ。ここは全国から絵を勉強したい学生が集まるところだから、俺レベルはいくらでもいる」

そう言う男子生徒の顔は悔しそうで、口にしている言葉は本心だとわかる。それと同時に私自身の胸も痛みを覚えた。だって私も同じように考えることがあるから。

SNSを見れば色んな人が自身の描いた絵を投稿している。その絵はみんな上手で、私なんて絵を描くのが好きなだけで才能ないんじゃないかって考えてしまう。何度か「才能ないんじゃない」なんて軽く言われたこともあった。でもーーー。

「絵、一緒に描きませんか?」

私は鞄の中からスケッチブックを取り出す。いつも持ち歩いているんだ。私がスケッチブックを開くと、男子生徒も鞄からスケッチブックを取り出す。絵が好きな人はみんな持ち歩いているものなのかな?
< 5 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop