初めまして、新しい一日
鉛筆を紙に走らせる。今日はその音が二つ。誰かと一緒に絵を描くなんて久しぶりで、ちょっと緊張する。だけど楽しい。

頭の中に思い浮かんだものを描く。私の好きな推しを描くことにした。Vtuberの七瀬柘榴(ななせざくろ)ちゃん。同い年なのに大人っぽい声をしていて、イラストもクールで綺麗な女の子だ。モデルさんがランウェイで着ていそうなかっこいい服を着ている。人気のVtuberで最近はオリジナル曲を歌ってたりするんだ!

綺麗な女の子だから顔を描くのは緊張する。でも少しずつ完成していく絵にわくわくする気持ちが抑えられない。やっぱり楽しいなぁ……。

ふと顔を上げて男子生徒の方を見た。その瞬間に胸がさっきとは違う鼓動を立てる。彼から目を離すことができない。

真剣に紙を見つめるその顔は凛々しくて、私より大きな手が鉛筆を持っていて、少しずつ傾き始めた太陽の光が髪を照らしていて、とても綺麗。まるで男子生徒がキャンバスに描いた絵みたいで、つい見つめてしまう。

「……何?」

視線に気付いたのか彼は顔を上げ、私を不思議そうに見つめる。私は慌てて「すみません」と謝った。首を傾げる彼に言う。
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