一途な溺愛が止まりません?!〜従兄弟のお兄様に骨の髄までどろどろに愛されてます〜
27、建国記念日
結婚式が終わって一ヶ月、ヴァールが王に、プリンツェッスィンが王妃になる式典が建国記念日に行われる。
現王であるゲニーから冠を受け継いだヴァールはいつもの優しい表情だけではなく、まさに王としての責任と強い意志を感じる眼で国民の前に現れた。
「私はこの国を世界の平和の先駆として、争いのない豊かな国にしていく。皆が嬉しい時も、楽しい時も、そして辛い時、苦しい時も共に歩んでいける王となることを誓おう。皆も私と共に歩んでくれないか!」
強い意志と志を秘めるその眼は、ヴァールの心根の優しさも醸し出し、国民を包む。
「私も陛下を支え、共に成長していきます」
プリンツェッスィンの可憐であるが、芯のある声が響き渡った。
「「ヴァール国王陛下万歳! プリンツェッスィン王妃殿下万歳!」」
新たな王の誕生、そしてそれを支える王妃の誕生に国が沸きあがる。
「ここからは無礼講だ! 建国記念日を楽しむように!」
ヴァールが楽しそうに笑い、建国記念日の祭りのファンファーレが幕開けを告げた。
フリーデン中立国家の創立記念日である若葉の月新緑の日である今日は、無礼講が許される年に一度の一大イベントが行われるのだ。
城の中庭は城門に続いてるのだが、その城門を開け街と城との隔たりをなくすお祭りで、大道芸人やキッチンカー、バザー、観劇など国民がこぞって自分の得意分野で祭りを盛り上げる。
もちろんその祭りで得た資金は全部稼いだ者に入り、普段の商いの宣伝にもなるので、国民も創立祭を好ましく思っていた。
毎年王族主催の催し物もあり、一昨年は優勝者に賞金が出るヴァイスハイトのクイズ問題。去年は優勝者が美味しい肉と魚の詰め合わせが貰える、食べたものを当てる味覚王者決定戦だった。
そして今年は王族六人で誰が一番かをプレゼンをし、国民が投票、そして投票結果の順位を当てる推測が当たったものに賞金を出すという催し物になった。
投票が行われ、国民らは順位を予想する。やはり期待値からヴァールが一位だと予想するものが多かったが、ゲニーたちもその功績から中々に国民から支持をされ、誰も予測不可能である。
箱を開けてみるとまさかの六人同票だった。しかし票がひとつ足りない。あと一人投票してないことが分かった。誰が投票してないか魔法で探すと、プリンツェッスィンが忘れて投票してないことが分かる。
誰もがヴァールに入れて彼が勝つと思ったが、プリンツェッスィンは夫には入れなかった。
プリンツェッスィンの投票用紙には『国民』と書かれてある。誰もがそれは無効票だと思ったが、プリンツェッスィンは威厳のある姿で国民の前で口を開いた。
「国民の皆様が我が王族を愛してくれてることは痛いほどわかりました。その中で優劣をつけるのは皆様に失礼かと思い直しました。私たち王族は皆様ありきの存在です。王族代表として御礼申し上げます。これからも世界の中立国家として、国民と力を合わせて平和な国へ、平和な世界へ尽力していきます……うぇ……気持ち悪い」
立派なことを言ってプリンツェッスィンは吐き気を催す。
「食べ過ぎかー?!」
プリンツェッスィンは国民にからかわれるが、ヴァールはもしかしてとハッとした。
最近普段食べないものを食べていたことと、眠い眠いと眠気を訴えたこと、ストレスからだと思っていた遅れてる生理、そして今回の吐き気だ。
ヴァールはプリンツェッスィンをお姫様抱っこし、叫ぶ。
「医師を呼んでくれ! お産に詳しいものを!」
大声で言い放ち、自分たちの寝室へプリンツェッスィンを運んだ。
婚姻し式を挙げたのが先月なのに、あまりにも早すぎると国民たちをはじめ、ゲニーたちは驚く。
驚いたのもつかの間、国民たちは新たな王族誕生の前触れに歓声を上げ、祭りの雰囲気はさらに盛りあがったのだった。
◇
「ご懐妊おめでとうございます」
医師がプリンツェッスィンを診たあと告げる。
「ツェスィー……」
「兄様……」
プリンツェッスィンとヴァールは強く抱き合い、目には涙を浮かべていた。
「ツェスィー、ありがとう」
「いいえ、兄様こそありがとうございます」
側にいたヴァイスハイトが不思議そうな顔をし、口を開く。
「というか早くないか?」
その場は一瞬静まり返った。
「そうよ! まさか! しない約束だったのにしたの?!」
「ヴァール! そんな子に育てた覚えはないわ!」
それをアンジュとデーアの叫び声にも似た驚いた声が破る。
「それはないよ。ヤったらアソコが爆発する魔法かけてたから」
ありえないとばかりにゲニーはあははと笑いながら先日の種明かしをした。
「は?!」
「いやだから、チンコ爆発する魔法だ」
ヴァールは目を点にし、叔父を見る。ゲニーは意味がわからないのかと説明した。
「いや、それは分かりますよ?! そうじゃなくて、もし爆発したらどうしてたんですか?!」
「まあ……世継ぎは無理だから、王族の危機かな? それかツェスィーが他の婿を摂るか」
ゲニーは面白可笑しそうにニヤリと笑う。
「良かった……。致さなくて本当良かった……」
ヴァールは涙目になりながら胸をなでおろした。
「じゃあ何故妊娠したんだ?」
また唐突なヴァイスハイトの発言により、一同シーンとなってしまう。
「まさか?!」
「え! まさか?!」
「うそだわ! まさかそんな!」
「ああ、それしかないな」
ゲニー、アンジュ、デーア、ヴァイスハイトが驚き、目配せをした。
ヴァールは両親たちの反応を見てサーッと青ざめる。
「ツェスィー、お腹の子が僕の子じゃなくても、ちゃんと可愛がって育てるから安心して? それにこの子には罪は無い」
「え?! 兄様?! 何故そのようになるんですか?!」
「大丈夫、ツェスィーが好き好んで浮気したとは思ってないよ。無理矢理されたか……寝てる間にされたか……」
柄にもなく顔がピキピキと引き攣ってる夫を見て、ツェスィーは溜息をついた。
「そんなことするのはヴァールお兄様だけですよ……。私は兄様以外とは誰ともしてませんし、襲われてもいません」
「じゃあ……何で妊娠したの?」
「分かりませんか?」
「え?」
ヴァールはよく分からないという顔をし、プリンツェッスィンを見る。
「ヴァールってツェスィーの事になると途端にポンコツになるよな」
「まあ、そこが可愛いんだけどね」
「ふふ、少し誰かに似てるんじゃないかしら?」
「デーア、それは俺のことを言ってるんじゃないだろうな?」
妻に思いもしない事を言われ、ヴァイスハイトは少し不機嫌そうな顔をした。
「ふふ、バレた? 賢いあなたも素敵だけど、たまにポンコツな発言するあなたも大好きよ」
「まあそれはゲニーもだから、アルメヒティヒ家特有のものかもね〜」
「僕もなの?!」
両親たちの会話を聞きながらヴァールは口を開く。
「えっと、みんなは分かってるんですよね?」
この状況が一人理解できないヴァールは愛する妻に答えを求めるために、プリンツェッスィンに顔を向けた。
「兄様まだ分からないんですか? もう……。あの時出来たんですよ……」
「あの時?」
「だから……私たちが……初めて愛し合った日です……」
プリンツェッスィンは照れながらことの次第を伝える。
「えぇ?! だ、だってあれ一回で?!」
「それしか考えられません」
「だって母上は三年、お母様に至っては九年かかったんだよ?!」
ついポロッと発言してしまったことをやばいと思ったが、もうそれは遅く父親たちは恐ろしい顔をヴァールに向けた。
「「悪いか?」」
「いえ……決してお父様たちがどうとか非難してるわけじゃ……」
言い訳を申し訳そうに言うヴァールを見て、ゲニーは困ったような降参した顔をする。
「はぁ〜。別に早く出来たからって愛がどうだのとは言わないが、ヴァールに負けるとはなぁ〜」
「俺たちの子種に何か問題があったのかと、父親として情けなくなる」
少し面白そうにする弟とは違い、ヴァイスハイトは本気で落ち込んだ。
「そんなことないわよ? 不妊はどちらかが悪いとは限らないわ」
「そうよ! ゲニーの愛情はヴァールがツェスィーを愛するより絶対あるから!」
愛する夫が落ち込むのを見てデーアとアンジュはフォローを入れる。
「ま、おめでとう! 孫かぁ。考え深いな」
「男の子だろうか? 女の子だろうか?」
妻たちに励まされ、夫たちはコロッと態度を変えた。
「僕はどっちでもいいかな。それに、男女共に産めばいいし。男女出来るまで作ろうね?」
「兄様……」
プリンツェッスィンは照れて頬を染める。プリンツェッスィンの表情とヴァールの発言にゲニーたちも大笑いするのだった。
現王であるゲニーから冠を受け継いだヴァールはいつもの優しい表情だけではなく、まさに王としての責任と強い意志を感じる眼で国民の前に現れた。
「私はこの国を世界の平和の先駆として、争いのない豊かな国にしていく。皆が嬉しい時も、楽しい時も、そして辛い時、苦しい時も共に歩んでいける王となることを誓おう。皆も私と共に歩んでくれないか!」
強い意志と志を秘めるその眼は、ヴァールの心根の優しさも醸し出し、国民を包む。
「私も陛下を支え、共に成長していきます」
プリンツェッスィンの可憐であるが、芯のある声が響き渡った。
「「ヴァール国王陛下万歳! プリンツェッスィン王妃殿下万歳!」」
新たな王の誕生、そしてそれを支える王妃の誕生に国が沸きあがる。
「ここからは無礼講だ! 建国記念日を楽しむように!」
ヴァールが楽しそうに笑い、建国記念日の祭りのファンファーレが幕開けを告げた。
フリーデン中立国家の創立記念日である若葉の月新緑の日である今日は、無礼講が許される年に一度の一大イベントが行われるのだ。
城の中庭は城門に続いてるのだが、その城門を開け街と城との隔たりをなくすお祭りで、大道芸人やキッチンカー、バザー、観劇など国民がこぞって自分の得意分野で祭りを盛り上げる。
もちろんその祭りで得た資金は全部稼いだ者に入り、普段の商いの宣伝にもなるので、国民も創立祭を好ましく思っていた。
毎年王族主催の催し物もあり、一昨年は優勝者に賞金が出るヴァイスハイトのクイズ問題。去年は優勝者が美味しい肉と魚の詰め合わせが貰える、食べたものを当てる味覚王者決定戦だった。
そして今年は王族六人で誰が一番かをプレゼンをし、国民が投票、そして投票結果の順位を当てる推測が当たったものに賞金を出すという催し物になった。
投票が行われ、国民らは順位を予想する。やはり期待値からヴァールが一位だと予想するものが多かったが、ゲニーたちもその功績から中々に国民から支持をされ、誰も予測不可能である。
箱を開けてみるとまさかの六人同票だった。しかし票がひとつ足りない。あと一人投票してないことが分かった。誰が投票してないか魔法で探すと、プリンツェッスィンが忘れて投票してないことが分かる。
誰もがヴァールに入れて彼が勝つと思ったが、プリンツェッスィンは夫には入れなかった。
プリンツェッスィンの投票用紙には『国民』と書かれてある。誰もがそれは無効票だと思ったが、プリンツェッスィンは威厳のある姿で国民の前で口を開いた。
「国民の皆様が我が王族を愛してくれてることは痛いほどわかりました。その中で優劣をつけるのは皆様に失礼かと思い直しました。私たち王族は皆様ありきの存在です。王族代表として御礼申し上げます。これからも世界の中立国家として、国民と力を合わせて平和な国へ、平和な世界へ尽力していきます……うぇ……気持ち悪い」
立派なことを言ってプリンツェッスィンは吐き気を催す。
「食べ過ぎかー?!」
プリンツェッスィンは国民にからかわれるが、ヴァールはもしかしてとハッとした。
最近普段食べないものを食べていたことと、眠い眠いと眠気を訴えたこと、ストレスからだと思っていた遅れてる生理、そして今回の吐き気だ。
ヴァールはプリンツェッスィンをお姫様抱っこし、叫ぶ。
「医師を呼んでくれ! お産に詳しいものを!」
大声で言い放ち、自分たちの寝室へプリンツェッスィンを運んだ。
婚姻し式を挙げたのが先月なのに、あまりにも早すぎると国民たちをはじめ、ゲニーたちは驚く。
驚いたのもつかの間、国民たちは新たな王族誕生の前触れに歓声を上げ、祭りの雰囲気はさらに盛りあがったのだった。
◇
「ご懐妊おめでとうございます」
医師がプリンツェッスィンを診たあと告げる。
「ツェスィー……」
「兄様……」
プリンツェッスィンとヴァールは強く抱き合い、目には涙を浮かべていた。
「ツェスィー、ありがとう」
「いいえ、兄様こそありがとうございます」
側にいたヴァイスハイトが不思議そうな顔をし、口を開く。
「というか早くないか?」
その場は一瞬静まり返った。
「そうよ! まさか! しない約束だったのにしたの?!」
「ヴァール! そんな子に育てた覚えはないわ!」
それをアンジュとデーアの叫び声にも似た驚いた声が破る。
「それはないよ。ヤったらアソコが爆発する魔法かけてたから」
ありえないとばかりにゲニーはあははと笑いながら先日の種明かしをした。
「は?!」
「いやだから、チンコ爆発する魔法だ」
ヴァールは目を点にし、叔父を見る。ゲニーは意味がわからないのかと説明した。
「いや、それは分かりますよ?! そうじゃなくて、もし爆発したらどうしてたんですか?!」
「まあ……世継ぎは無理だから、王族の危機かな? それかツェスィーが他の婿を摂るか」
ゲニーは面白可笑しそうにニヤリと笑う。
「良かった……。致さなくて本当良かった……」
ヴァールは涙目になりながら胸をなでおろした。
「じゃあ何故妊娠したんだ?」
また唐突なヴァイスハイトの発言により、一同シーンとなってしまう。
「まさか?!」
「え! まさか?!」
「うそだわ! まさかそんな!」
「ああ、それしかないな」
ゲニー、アンジュ、デーア、ヴァイスハイトが驚き、目配せをした。
ヴァールは両親たちの反応を見てサーッと青ざめる。
「ツェスィー、お腹の子が僕の子じゃなくても、ちゃんと可愛がって育てるから安心して? それにこの子には罪は無い」
「え?! 兄様?! 何故そのようになるんですか?!」
「大丈夫、ツェスィーが好き好んで浮気したとは思ってないよ。無理矢理されたか……寝てる間にされたか……」
柄にもなく顔がピキピキと引き攣ってる夫を見て、ツェスィーは溜息をついた。
「そんなことするのはヴァールお兄様だけですよ……。私は兄様以外とは誰ともしてませんし、襲われてもいません」
「じゃあ……何で妊娠したの?」
「分かりませんか?」
「え?」
ヴァールはよく分からないという顔をし、プリンツェッスィンを見る。
「ヴァールってツェスィーの事になると途端にポンコツになるよな」
「まあ、そこが可愛いんだけどね」
「ふふ、少し誰かに似てるんじゃないかしら?」
「デーア、それは俺のことを言ってるんじゃないだろうな?」
妻に思いもしない事を言われ、ヴァイスハイトは少し不機嫌そうな顔をした。
「ふふ、バレた? 賢いあなたも素敵だけど、たまにポンコツな発言するあなたも大好きよ」
「まあそれはゲニーもだから、アルメヒティヒ家特有のものかもね〜」
「僕もなの?!」
両親たちの会話を聞きながらヴァールは口を開く。
「えっと、みんなは分かってるんですよね?」
この状況が一人理解できないヴァールは愛する妻に答えを求めるために、プリンツェッスィンに顔を向けた。
「兄様まだ分からないんですか? もう……。あの時出来たんですよ……」
「あの時?」
「だから……私たちが……初めて愛し合った日です……」
プリンツェッスィンは照れながらことの次第を伝える。
「えぇ?! だ、だってあれ一回で?!」
「それしか考えられません」
「だって母上は三年、お母様に至っては九年かかったんだよ?!」
ついポロッと発言してしまったことをやばいと思ったが、もうそれは遅く父親たちは恐ろしい顔をヴァールに向けた。
「「悪いか?」」
「いえ……決してお父様たちがどうとか非難してるわけじゃ……」
言い訳を申し訳そうに言うヴァールを見て、ゲニーは困ったような降参した顔をする。
「はぁ〜。別に早く出来たからって愛がどうだのとは言わないが、ヴァールに負けるとはなぁ〜」
「俺たちの子種に何か問題があったのかと、父親として情けなくなる」
少し面白そうにする弟とは違い、ヴァイスハイトは本気で落ち込んだ。
「そんなことないわよ? 不妊はどちらかが悪いとは限らないわ」
「そうよ! ゲニーの愛情はヴァールがツェスィーを愛するより絶対あるから!」
愛する夫が落ち込むのを見てデーアとアンジュはフォローを入れる。
「ま、おめでとう! 孫かぁ。考え深いな」
「男の子だろうか? 女の子だろうか?」
妻たちに励まされ、夫たちはコロッと態度を変えた。
「僕はどっちでもいいかな。それに、男女共に産めばいいし。男女出来るまで作ろうね?」
「兄様……」
プリンツェッスィンは照れて頬を染める。プリンツェッスィンの表情とヴァールの発言にゲニーたちも大笑いするのだった。