一途な溺愛が止まりません?!〜従兄弟のお兄様に骨の髄までどろどろに愛されてます〜

3、ヴァールの学校生活(☆)

 ヴァールは今年で十三歳になる。この春からフリーデン王国が設立したこの国の十三歳になる子から十八歳までの子なら無料で通えるフリーデン王立学園に入学するのだ。ヴァールの母である宰相補佐のデーアが王であるゲニーに進言し建てられたその学園は、貴族平民全ての子に教育をと義務教育制で、王族以外は全寮制となっている。

 学園は全入ではあるが入学試験があり、筆記試験と魔法の実技試験の総合点が一番高かった新年生は入学式で代表挨拶をすることになっていた。試験はカンニングや替え玉など不正を働くことが出来ないよう魔法を施されてある。今年の代表挨拶はヴァールがすることになっており、学園創設以来きっての満点という好成績をたたき出した神童見たさに入学する者は勿論、在学生も彼が到着するのを今か今かと待っていた。

 新入生生徒の転移が全て終わて次はヴァールの番になり、転移魔法陣の上に扮装したグレンツェンと共に転移してくる。姿絵ではヴァールを拝見したことのある生徒たちだが、姿絵よりも美少年の本人を目の当たりにして、その場は女子の黄色い声と男子の嫉妬の視線が混交した。グレンツェンはあんな面白い光景初めて見たと大笑いするが、ヴァールにとってはあまりいい思い出ではない。

 学園には大体三通りの人間がいて、ヴァールに取り入ろうと媚び(へつら)う者、現王政に不服があり何かと反論したり攻撃的なことをする者、自分は関係ないと距離をとる者であった。

「お父様と父上はもう一通りの人間を見極めて味方にしてこいと言ったんだ」
「つまり『自分のために耳が痛いことを言ってくれる忠誠心の高い者』か」
「うん。グレンのような、ね」

 大好きな主人に笑顔でそう言われ、グレンツェンも悪い気はしない。二人は特例として寮生活ではなく、城へ帰宅することになっていた。こんなことは城内のヴァールの自室でしか言えないのだ。

「兄様! お帰りなさい!」

 ヴァールの部屋のドアが大きな音を立て開き、この国の王女であるプリンツェッスィンがシャイネンを連れていきよいよく入ってくる。魔法で施錠はしてあるが、プリンツェッスィンだけは例外で入れるようにしてあった。

「ツェスィー、ただいま。いい子にしてたかな?」
「はい! 寂しかったですが、いい子にしてました!」
「そう、良かった……」

 自分に対して色んな感情を(いだ)く者たちと接し、少なからず気が滅入ってしまったヴァールはいつもより元気がなく、プリンツェッスィンは目の前の愛しい人に何かあったのかと幼心に感じ取る。

「兄様……」

 プリンツェッスィンが悲しそうな顔をしてるのに気付いたヴァールは慌てて口を開いた。

「ごめんごめん。初めて学園へ登校したから、びっくりしただけなんだ。ツェスィーが心配することは何もないよ。さぁ、もう夕飯でしょ? 食べに行こう!」

 元気を装うヴァールだが、今までずっと一緒に過ごしてきたプリンツェッスィンには見抜かれている。

「姫さん、いいこと教えてあげるよ」
「いいこと?」

 ヴァールの後をついて行こうとしたプリンツェッスィンはグレンツェンに引き止められ、耳打ちされた。

「男はなぁ、好きな女の子にアソコいいこいいこしてもらうと元気出るんだぜ?」
「アソコ……?」
「足の付け根にあるじゃん? 男の子しかついてないアレだよ。って痛ぇええ!!」

 ゴスンと鈍い痛々しい音がし、グレンツェンが脳天を両手で押さえながらのたうち回る。グレンツェンに鉄拳制裁を加えたシャイネンはプリンツェッスィンに駆け寄った。

「姫様! この破廉恥クソ野郎が言ったことはお忘れください。姫様は一生知らなくていいことです」
「いや、一生は知っといた方がいいんじゃね?」

 破廉恥クソ野郎ことグレンツェンは痛みに耐えながら涙目でシャイネンの言うことに突っ込む。

「煩い! 黙れ! それ以上言うと殺す!」

 王女付き従者は殺気しかない瞳でグレンツェンを睨み付けた。

 その場は駆け戻ってきたヴァールによって(しず)められる。しかしシャイネンに忘れろと言われたが、プリンツェッスィンは何の事だか気になってしまった。

 日に日に(やつれ)れていくヴァールを見たプリンツェッスィンは、例の足の付け根にある男の子にしかついてないアレとご対面する為に大好きな従兄をお風呂に誘う。

「ツェスィー、今日はお風呂の日じゃない気がするんだけど……?」
「少し前倒しです! ダメですか?」

 愛するお姫様に上目遣いでお願いされ、ヴァールは嫌と言えなかった。シャイネンにはグレンツェンに言われたようなことはしなくていいと耳がたこになるほどいわれたが、プリンツェッスィンは心の中で自分の従者に謝りながら約束を破る。

「兄様! ツェスィーが体を洗ってさしあげます!」
「え? いいよ、ツェスィーは自分の体を洗いなよ」
「いいですから! ね?」

 シャイネンが従者になるまで、二人で入る時はプリンツェッスィンの体はヴァールが洗っていたが、その出来が良い従者のお陰で従妹も体の洗い方を覚え、最近は一緒に入っても各自で洗うようになっていた。

「ヴァール兄様、気持ちいですか? 痒いところないですか?」
「うん……大丈夫」

 背中を泡のついたタオルで擦られ、気持ちよくてうっとりしてるヴァールを見て、プリンツェッスィンは今だと思い大好きな従兄の股の前に行き屈む。そしてヴァールの腰に巻いているタオルを剥ぎ取った。

「ふぇ?!」

 可愛い従妹にタオルを剥ぎ取られ、ヴァールは驚いて情けない声を出してしまう。

「いいこいいこしてあげます!」
「は?!」
「グレンがココをいいこいいこすると、男の子は元気になると教えてくれました!」
「はぁああ?!」

 ヴァールは自分の従者がこの国の王女にとんでもなくふしだらなことを教えてる事実を知り、頭が痛くなった。

「ツェスィー、あのね。そんなことをしても元気にならないし、そういうことは他の人にしちゃダメだからね?!」
「ツェスィーだってヴァール兄様以外にしたくありません。元気にならないのですか? グレンの言ってたことは嘘なんですか?」

 せっかくヴァールを元気にできると期待していたプリンツェッスィンは泣きそうな顔をする。

「嘘じゃな……いやいやいや! 嘘だから! グレンに嘘つくなって怒っておくよ」

 あははと取り繕うヴァールの嘘を見抜いたプリンツェッスィンは歳を重ね段々と大人になりかけている途中の従兄のアソコに手を触れた。

「ひゃ?!」
「……? 少しおっきくなりました! これが元気になるってことですか?!」
「グレン……。後でシメる……」

 ヴァールは普段怒ったりしない温厚な性格だが、今回のことは流石にいただけないとグレンツェンを恨む。

「ツェスィー、もうやめて? 元気になったからもういいでしょ?」

 ヴァールはプリンツェッスィンにやめてほしいと優しく言った。

「でも白いものが出たら、元気いっぱいになるとグレンが言ってました! ヴァール兄様には元気いっぱいになって欲しいです!」
「あいつ……何言ってるの……」

 可愛くて目に入れても痛くない愛しいお姫様に変なことを吹き込む自分の従者に怒りを覚えながらわなわなと震える。

 その場はヴァールがプリンツェッスィンを言い聞かせ収まったが、彼女を先に風呂場から出したあと一人で慰めることになったのだった。
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