玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
「だ、大丈夫ですよ‥‥
 みんないますし、自分のことは
 ちゃんと分かってますから。」


『そうか‥‥‥足止めしてすまない』


「いえ‥‥お疲れ様でした。」


変な雰囲気にこれ以上なると
嫌だったので、掴まれていた肩から
腕を離すと頭を下げて少し先で待つ
みんなの元に向かった。


『どうかした?』


「えっ?ううん‥みんな飲み過ぎず
 楽しんできてって。」


掴まれていた場所が痛くて熱い‥‥


向けられた視線が真っ直ぐ過ぎて、
部下のことを心配して言ってくれてるって分かるのに話せたことが嬉しいなんて
思ってしまう。



4人で街中の街路樹に飾られた
イルミネーションを見ながら
バルに到着をすると、お酒をそれぞれ
頼んで乾杯をした。



『うー、寒いけど美味しい!』

「菖蒲飲み過ぎないでね。
 わたし今日は送っていけないから。」


2人で飲む時はどちらかの家にそのまま
泊まることが多かったから、多少
酔ってもなんとかなっていたけど、
今日は2人がいるから様子を見ながら
飲むペースを抑えないと‥‥


『井崎さん、大丈夫です。
 僕がちゃんと先輩を送りますから。』


杉浦君がそう言ってくれるなら
安心だけど、菖蒲は飲み過ぎると
テンション上がるか酔い潰れるか
のどちらかだから心配だ‥


『井崎さんは電車?』


「はい。ここから二駅なので
 あっという間です。酔ったら
 タクシー使うので大丈夫ですよ。」


『そっか、なら安心だね。
 あっ、料理が来たから食べようか。』


面倒見がいいだけあって、
親しみやすい立田さんと色々話した。


出身は静岡県で兄弟が下に3人も
いる事や、休みの日は友達と
フットボールをしたり、体を
動かすのが好きということも知れた。


「兄弟が多いから立田さんは
 しっかりされてるんですね。」


『そう見えるなら嬉しいよ。』


『立田さん、企画部でもみんなの
 こと見てるから仕事でつまづくと
 相談に乗ってくれたりと助けて
 もらってます。』


杉浦君がそう言うなら本当だと思う。
照れて笑う姿にもなんだかホッと
させられる。


『井崎さん、次何飲む?』


「あ、じゃあ白ワインを飲んでも
 いいですか?弱めので。」


『じゃあボトルで頼もう。
 俺も飲むから。』


美味しいフレンチにみんな、
お酒も食も進んで、21時を過ぎる
頃には菖蒲も出来上がってしまい、
帰ることになった。


『立田さんご馳走様です。』


『おう、また行こうな。
 犬塚のこと頼んだぞ。』


『はい、任せてください。』
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