玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
「お待たせしました‥‥あっ」


喫煙スペースで煙草を吸いに行くと
先に出た筒井さんの周りに、観光
で来ていた人達が声をかけていて
そばに行きづらく足が泊まってしまう


こんな時自信たっぷりに声を
出せたらいいのだけど、何故かそれが
出来ないでいたら、筒井さんの方から
気付いて来てくれた。



『そんなとこに立って何してるんだ?
 体調でも悪いならやめてもいいから』



「い、いえ‥‥大丈夫です。
 ちょっとぼーっとしてしまって。」



『フッ‥‥それなら行こうか。』


自然に手を取られて繋がれると、
先程の人たちの視線を浴びながらも
俯いたまま筒井さんと旅館を出た。


タクシーで一旦駅まで向かい、
そこから2人でお土産を見たり、
食べ歩きをしたりしながら歩き、
お昼は鯛めしを美味しく頂いた。


神社や滝などのパワースポットも巡り
甘味処でお団子と温かい抹茶を
飲みながら足湯に浸かり景色を眺めた。



別荘に行った時とは違い、
体の内側が解されて行くような
時間の過ごし方に癒される


「蓮見さん、こんなお土産で
 本当に大丈夫でしょうか?」


『アイツは相当甘党だから喜ぶさ。』


えっ!?
蓮見さんって甘党なの!?


ワインやシャンパンを飲んでるのは
見慣れてるけど、ナッツやチーズを
おツマミにしてたから意外だ


『なんでアイツが親の会社じゃなく
 チョコレート会社にいるか
 分かるだろ?お前と同じであそこの
 チョコレートが好きなんだよ。』


「そうなうですね‥‥なんかすごく
 親近感が沸きました。
 筒井さんの考えられた珈琲にあう
 あのチョコレートは美味しいから
 常にストックしてます。」


頑張った日や疲れた時に食べると
口溶けがいいのに甘過ぎないから
自分へのご褒美みたいなものだ。


海外に行く予定だったから、
すっかり持ってくることが頭になく
何故だか急に食べたくなってきた。



『じゃあそんなお前に‥‥はい。』


えっ?


ボディバッグから取り出した小さな
掌サイズの箱を取り出すと、
私の手を取りそこに乗せてくれた。


キャラメル色の箱にかけられた
ワインレッドカラーのリボンが綺麗だ


「‥‥これってもしかして」


『フランスのチョコ。
 形は同じでもミルクやカカオの濃さも
 違うから食べ比べるといい。』


嬉しい‥‥‥
チョコレート好きな私には堪らない
お土産に食べるのも勿体無いなんて
感じてしまう


「ありがとうございます。
 すごく嬉しいです‥‥」


そう言った私の肩を筒井さんは
抱き寄せたので、その肩に少しだけ
頭を預けることにした
< 23 / 145 >

この作品をシェア

pagetop