玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
夕食はお寿司が食べたいと言っていた
筒井さんのためにまた蓮見さんが
予約してくれたホテル内の有名な
場所に食べに行き、お任せの旬の
コースを頂きゆっくりとホテルに
戻ってきた。


あっという間の2日間だったな‥‥
もう明日が帰る日なんて‥‥


荷物を整理しながらも、
急に感じる寂しさにため息が出る


楽し過ぎて幸せすぎる時間だったから
余計にまたそばに居ないという現実に
向き合わないといけないのだ


半年前のように笑顔でまた
見送れるだろうか‥‥
ううん‥‥しないと心配されてしまう


『‥‥‥どうした?』


筒井さんに頂いたチョコレートを
両手に持ち見つめながら床に座り込んで
いた私の元に、温泉に入ってきた
筒井さんがベッドに腰掛ける


当たり前にこんなふうにかけてくれる
声もまた次はいつ聞けるか分からない


ダメだ‥‥やっぱり
考えたくないのにどうしようもなく
寂しくてたまらない‥‥



「筒井さん‥‥大事な時間を
 私と過ごしてくださって‥‥
 ありがとうございます‥私
 とても‥‥幸せでした‥‥。」


泣く前にちゃんと伝えたかった‥‥


忙しい中きっと予定を詰めて
帰ってきてくださってるはず。
明日帰ってしまうことになるなら
今のうちに言いたかったのだ。


『俺がお前に会いたくて来たんだよ。』


えっ?



両腕を引かれると、筒井さんの足の間に
座らされ後ろから優しく抱き締められる


蓮見さんに呼ばれたから
日本に来たんじゃなかったの?


『離れてみてやっぱり考えるのは
 いつもお前のことだった‥‥。』


筒井さん‥‥


私の肩に顎を乗せると、お腹に回された
手が私の手を取り指を絡めていく


こんな甘えモードの筒井さんを
見たことがなく、緊張しつつも、
黙って声に耳を傾けた



『お前があの時終わらせたくないと
 言った言葉を毎日向こうで考えた。
 俺からちゃんと終わらせて
 やるべきじゃなかったのかとな‥。
 でも‥‥拓巳からお前を泣かせたと
 連絡が来た時、気付いたら電話
 をしていた自分に驚いた‥‥‥。
 そばに居てやりたい‥ってな。
 フッ‥‥こら、泣くな。』



堪えきれず涙が出てしまった私は
花野さんのことで泣いた時のことを
思い出し、蓮見さんさんのおかげだったんだと気付かされた。


あんなタイミングよく電話が
来るなんて驚いたけど、色々な人が
心配をしてしてくれた行動にも嬉しくて
涙が出てしまう



「‥‥いつ帰られてしまうんですか?」




『お前の誕生日を祝ったら戻るよ。』


ドクン

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