玉響の花霞 あなたにもう一度恋を 弍

肌かけ布団や枕など
日干し出来るものはして、
シーツや洗濯物は乾燥機にかけ
お風呂掃除や掃除機などは筒井さんが
やってくれたので、数日分の
作り置きや常備菜などを
簡単に作ることにした。



「フランスのお家は広いんですか？」


お酒にあいそうなお通しなどを
作るわたしの目の前で、珈琲を
飲みながらパソコンで仕事をしている
筒井さんに何気なく聞いてみた。


向こうでの生活がどんなものなのか
知りたかったのかもしれない‥


『こっちにおいで‥写真あるから。』


えっ？


手を洗ってからカウンターに向かうと、
パソコンの画面をクリックして
そこに映る写真が見れるようにしてくれたので腰掛けて見ることにした。


『ここが会社の寮だ。』


「‥‥‥えっ？
　ここで寝泊まりされてるんですか？」


僅か4畳ほどのスペースに置かれた
ベッドとデスクに小さめのクローゼット
が写っていて、あまりの驚きに
筒井さんを見てしまう


硬そうなベッド
部屋に備え付けられているのは、
ベランダもなく小さめの窓のみで
なんだか窮屈そうな部屋に思える。


『意外か？』


「あ、いえ‥‥のんびりできているか
　心配になりました‥‥」


『この部屋の他にもう１部屋
　リビングと呼べる大きさではない
　けどソファとテーブルがある。
　あとは小さなキッチンとユニットバス
　があるくらいさ。』



温泉にのんびり行きたいと言うのも
納得してしまう。私が住んでいる
賃貸よりも圧迫感があるし、
なんだか殺風景で寂しそう‥‥


お仕事で行っているのだから
仕方のないことだと思うけど、
住み慣れていない国、のんびりできない
家で文句も言わず過ごしてることに
自分がより恥ずかしく思う。


人事の筒井さんが転勤なんて何故？
って思ったけど、フランスにいる
同期の方に以前お世話になったから、
指名されて決めたこと。


フランス語も話せることも優遇され、
今は人事ではなく別の部署で
その方のサポートをしてることなど
沢山話してくれた。




『お前も飲むか？』


「はい、いただきます。」


和食は沢山美味しいものを
食べたので、餃子が食べたいと
リクエストを聞き今日は中華に
してみたのだ



筒井さんはビールのプルトップを
開けると私の缶にコツンとぶつけ
乾杯をした。



『‥‥やっぱり日本がいいな。』


筒井さん‥‥