玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
筒井さんもメールを受け取って
少しでも元気が出てくれるといいな‥


何度もそのメールと画像を眺め
癒されたわたしは、
スマホを抱き締めるとそのまま
ラグの上に転がり瞳を閉じた






「おはようございます。」


『おはよう。今日は大阪支社から、
 社長の御子息がお見えになるから、
 粗相のないようにお願いね。』


「はい、かしこまりました。」



社長の息子さんか‥‥


入社式の時にもいた気がするけど、
あの時は筒井さんと再会したことで
頭がいっぱいいっぱいだったから
正直あまり覚えていない‥‥


ロッカールームで身だしなみを
整えると、佐藤さんと受付周りの
掃除をしっかりと行い、1日の業務が
始まった。




「◯◯様でいらっしゃいますね。
 担当のものをお呼び致しますので、
 あちらにかけてお待ち下さいませ。」



金曜日なのか、アポをとられている
お客様も多くて佐藤さんと対応に
追われながら過ごしていると、
ポーチに黒塗りの車が一台停まった。


もしかしてもうそんな時間?


こんな時に佐藤さんは外部からの
電話応対をされてしまってるから、
仕方ない‥‥1人で対応するか‥‥



後部座席のドアが開かれると、
そこから降りてきた人物に目が
奪われそうになりつつもお辞儀をとる
姿勢を保ち、エントランスのドアが
空いた瞬間に丁寧にお辞儀をした。



「お疲れ様でございます。
 受付担当の井崎と申します。」


長身で濃いグレーのスーツを着た
男性は、私の目の前まで来ると
ジッと見つめた後ニヤッと笑った



『君は初めての顔だな?
 えらいべっぴんさんがいると
 思ったけど‥‥社長室まで
 案内してくれる?』


「えっ?‥‥あ、あの、ご案内は
 秘書課の方が見えますので、
 私はここを離れるわけには‥‥」



何なの‥‥この人‥‥
容姿は整っていて素敵だなと思ったのに
ビックリするくらい馴れ馴れしくて
初めてなのに少し嫌悪感が出てしまう


社長の息子なら正直1人でも
上まで行けるのにどうして私に?



『井崎さん、ここは大丈夫だから。』


電話応対の途中で小声でそう
佐藤さんに言われたので、秘書課に
連絡をしてからお辞儀をしてジュニアを
案内することにした。


エレベーターを待つ間も
隣から感じる視線にもニコリと
微笑み返し、到着した後ボタンとドアを
押さえたまま頭を下げた。


「お待たせ致しました‥どうぞ」


グイッ


えっ!?
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