玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
『ほら‥‥
 あんたも一緒に乗るんだろ?』


ボタンを押さえていた手が離れると
引き寄せられたと同時にジュニアに
思い切りぶつかってしまい足まで
踏んでしまった


「申し訳ありません!
 お怪我がないといいのですが‥‥」


手首を掴まれたまま見上げると、
何も言わずにじっと見下ろす顔に
視線を逸らしてしまう


よりにもよって社長のご子息の朝を
ヒールで踏むなんて顔が青ざめていく


あれだけ佐藤さんに粗相のないようにって言われたのにどうしよう‥‥


7階でエレベーターが到着すると、
ドアの向こうに見えた人物に
助けを求めるように視線を送る


(は、蓮見さん!!助けて!!)


エレベーター内で男性に手首を
掴まれている状態の私を見たあと
助けてくれるかと思いきや、
男性の方を向いてニヤッと笑った


『翔吾(しょうご)!久しぶりだな。』


えっ!!?


これから会議なのかノートパソコンと
資料を片手に持った蓮見さんは、
私の横に立つジュニアに手を上げると
2人はハイタッチしはじめた。


『霞ちゃん俺10階ね。』


「えっ?あ、はい!10階ですね。」


慌ててボタンを押すと、私を真ん中に
して立った蓮見さんとジュニアを交互に
キョロキョロ見てしまう


隙を見て掴まれていた手をパッと
離すと視線を感じたものの、
絶対目は合わせないようにしようと
俯いてみる


『久しぶりだな拓巳。亮や滉一も
 元気にしてるか?
 あ、滉一はいないんだっけ?』


えっ?


まさかの筒井さんの名前に、
勢いよく顔を上げたら、ジュニアと
思いっきり目が合ってしまい慌てて
また下を向いた


不自然だったかな‥‥‥


でもこの3人とも仲が良いのかな?
って思うと気になってしまったのだ


『みんな元気だよ。翔吾はいつまで
 いるんだよ?』


『俺?あまり決めてないけど、
 とりあえず呼ばれたから来ただけ。
 久しぶりに飲もうぜ?』


『お、いいね?亮にも声かけとくわ。
 霞ちゃんまたね。』


「あ、はい。お疲れ様です。」



10階に到着したエレベーターから
蓮見さんが降りてしまうと、また
静かな空間に2人きりきなってしまう


もう‥‥何回も来てるなら
案内なんていらないんじゃないの?


早く受付に戻りたいのに‥‥


『拓巳達と仲がいいんだな?
 霞ちゃんは何歳?』 


えっ?
< 46 / 145 >

この作品をシェア

pagetop