玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
亮さんの隣の席を真っ先に確保すると、
帰りたいオーラを全面に出したらしく
苦笑いをされてしまう


『亮、久しぶりだな。』


『おう、翔吾がこっちに来てるって
 拓巳から連絡貰ってなんとか
 来れて良かったよ。来週から出張
 だったからさ。』


今日で良かった‥‥
蓮見さんとジュニアと3人なんて
食べた心地もしないと思う


『まずは乾杯しようぜ?
 霞ちゃんは何飲む?』


えっ?


『なに?何かおかしい?』


「あの‥‥呼び方が‥‥」


蓮見さんはもう慣れたけど、
ジュニアにちゃん付けで呼ばれるのは
ちょっと気まずい。


自社の社長の息子だし、
応対の仕方がいまいちよく分からない‥



『拓巳がそう呼んでたからみんな
 そう呼んでるんじゃないの?』


「蓮見さんだけです!
 普通に名字で大丈夫です。」


蓮見さんを基準で考えられると
正直困る‥‥蓮見さんは殆どの女性
全員に対してこんな感じだから仕方ない
しみんな分かってるけど、ジュニアが
会社でちゃん付けで呼んだら注目
されてかなりツラい。


『霞ちゃんって可愛かったのに
 残念だな‥‥嫌われたくないし
 井崎さんにしとくよ。何飲む?』


「‥ありがとうございます‥‥。
 私は酔うと真っ赤になってしまうので
 弱めのお酒なら大丈夫です。」


すんなり聞き入れてくれたのが以外で
ホッとすると亮さんが目を合わせて
大丈夫だからと言ってくれた。


初対面が馴れ馴れし過ぎたから
警戒して涙まで見せてしまったけど、
やっぱり年上で大人だから
紳士的な対応をしてもらえて嬉しくなる


鼻を摘まれたことは嫌だったけど、
それは筒井さんにしかされたくないから
そう思ってしまったのだ


『2人とも滉一と連絡取ってる?』


ドクン


乾杯をした後にジュニアから出た
筒井さんの話に心臓が小さく跳ねる



『俺は週に一度部屋の換気に行ってる
 し、送って欲しいものとかあれば
 やり取りしてるよ。』


『俺もそんな感じ。向こうからは
 滅多に連絡来ない。まぁ報告する
 ことはあるけどねー。』


「ゴホッ!‥‥ンッ!」


蓮見さんが私の方を見てウィンクを
してきたのでお酒が変なところに
入ってむせてしまった。


『元輝(もとき)の補佐で行ってるん
 だよな?』


『ん?ああ‥‥。滉一はアイツの為なら
 断れず行くのはわかってたから。
 落ち着いたら戻ってくるさ。』


元輝?

もしかして筒井さんが
お世話になったっていう人のことかな?


3人はフランス支社にいるその人とも
知り合いなんだ‥‥


『アイツのことだから早く戻って
 来るさ。人事の席もそのままに
 してあるし、何よりそばにいて
 あげたい人がいるからな。』


蓮見さん!!
< 51 / 145 >

この作品をシェア

pagetop