玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
「あ、あの‥‥い、伊野尾さんは
 いつまで東京にいらっしゃるん
 ですか?」


なんとか話題を変えないと
いけないと思い咄嗟に聞いてみた。


このままだと蓮見さんを止めれないと
思ったし、亮さんも下手に突っ込むと
いけないと思い静かにしてたから。


『気になる?』


「えっ!?‥‥あ‥‥社員さんたちは
 皆さん気にされてましたよ?」


容姿が整っているのにプラス
社長のご子息とあれば、みんな
噂をするのは仕方のないことだ。


アイドルやモデルさんが来たかのような
存在感がなんかあるもんね‥‥


『一月くらいは社長業務を手伝ってく
 予定だけど、まだ未定だな。
 それまではよろしくな?井崎さん。』


「はい‥私は受付で何もできませんが
 何かあればしっかりと対応させて
 いただきます。」


『ハハッ‥‥やっぱりあんたは
 俺の周りにはいないタイプだな?』



えっ?


嬉しそうに笑う相手に呆気に
とられてしまう。
無邪気な子供みたいな顔に、
体から力が抜けてなんだかおかしくて
一緒に笑ってしまった



カシャ



『おっ、今の顔いただき!
 ‥‥滉一に送信っと‥‥。』


「えっ?ちょっと!な、なにを
 送ったんですか!?」


『拓巳、くだらないメール送ると
 キレるぞ?』


『くだらなくないでしょ?
 1番見たい子の顔なんだから。
 ‥‥おっ、着信だ。
 ‥‥もしもし‥‥おう‥‥うん
 ‥‥翔吾?‥‥ちょっと待てよ?』


まさか筒井さんからの着信!?


蓮見さん宛てにかかってきたとはいえ
声だけでも聞きたい‥‥


スマホをジュニアに渡すと、
伊野尾さんが話し始めたので耳を
すませてみた。


『おう、滉一!元気か?
 ‥‥‥うん‥‥は?‥‥俺が?
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥クク‥‥‥
 そうなんだ?‥‥分かんないぞ?
 俺の方がそばにいるからな?
 ‥‥‥亮?ん、変わるわ。』


何話してるのかものすごく気になって、
ジュニアの手から亮さんに渡される
スマホを目で追ってしまう。



『どうした?‥‥‥ああ‥‥うん、
 心配すんな。‥‥‥変わるから
 ちゃんと自分で言え。‥‥‥
 井崎さん、どうぞ。』


えっ?


スマホを差し出されると、
思わず手が緊張で震えてしまい、
バタバタと両手を揺らしてから受け取り
耳元にそっと当てた。

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