玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
煙草の煙を吐き出す姿にさえ、
午前中から色気を放つ姿に、
窓のサッシにもたれながら見つめた


『どうせまた夜来るんだろ?
 放っておけ。それよりおいで、
 風が気持ちいい。』


ガーデンチェアデッキに足を伸ばした
まま座る筒井さんが左手を私に
差し出したので手を添えると、
そのまま私を足の間に座らせると
腰に軽く手を回し後ろから抱き締めた


もっと恥ずかしいことだって
色々されてるのに、明るい場所で
密着するのって結構緊張する


右手で私の指にはめられている
リングをさする手にもドキドキし、
首筋にかかる息にさえ唾を飲み込むほど
体が固まってしまう


『フッ‥‥お前がこんな感じだから
 惹かれたんだろうな。』


えっ?



振り向きたくても、すぐ後ろに
筒井さんが見てると思うと
恥ずかしくて動けない


惹かれるって‥‥筒井さんが私に?


「‥‥‥ありがとうございます。」


なんて言っていいか分からずに、
真っ赤だろう顔をパタパタと仰ぐと
首筋に唇が軽く触れた


『お前は綺麗すぎてほんとに
 純粋だから、俺みたいな汚れた
 部分を持つ者からしたらほんとに
 眩しいんだよ‥‥。
 自分の利益とか欲求とかを
 満たすヤツばかりを見てきたから、
 初めて喫茶店で丁寧に向き合う
 お前を見て惹かれるのに時間は
 かからなかった。』


筒井さん‥‥‥


「汚れてるだなんて‥‥ご自分のこと
 そんな風に言ってはダメです。
 誰でも良いこと悪いこと、嬉しいこと
 悲しいことを経験して今があると
 思ってます。
 私も筒井さんに思いを伝えたから
 全く違う人生を経験できてます。
 ですので筒井さんに出会えた事は
 私の人生で1番大きな事で大切に
 していきたいと思ってます。」



偉そうな事を言える立場じゃないけど、
私の為だけではなく、他のことにも
優先して生きてる筒井さんの人生を
汚れたことになんてしたくない‥‥


自分が初めて好きになった人だからこそ
そう思いたかった。


『‥‥お前と出会えた人生は
 俺にとっても大切で同じだ‥‥
 この手を手放さないでいて良かった』


ドクン


私の右手を取ると指を絡めて握り
私の肩に顔を埋めた。


筒井さんにそう言ってもらえただけで、
今日まで諦めずに思い続けたことが
良かったって本当に思え目頭が熱くなり
涙がこぼれそうになる


言葉が多いとは言えない筒井さんが
伝えてくれた思いを多分私は
一生忘れることはないと思う



『泣いた罰‥‥』

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