玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
本当に好きだからこそ、
相手の幸せを考えることが出来た
菖蒲を今は慰めたい。


当人同士にしか分からないことだから、
私なんかがどちらの味方になるなんて
出来ないけど、目の前で流している涙は
悲しい涙だから嘘じゃない。


抱き寄せる肩が小さく震えて、
嗚咽を堪えて泣く彼女に私も
泣いてしまう。


いつも明るくて、男勝りで
ムードメーカーだからこそ、
弱いところを見せずにいるだけで、
本当は誰よりも繊細で泣き虫なのかも
しれない。



「菖蒲、今日はうちに泊まりに
 おいで。美味しい朝ごはん
 作ってあげるから一緒に食べよう。」



『うん‥‥‥やった‥‥嬉し‥』


2人が今後どうなるか
見守るしか私には出来ないけど、
菖蒲がツラい時は必ずそばにいたいと
思えた。



菖蒲の家まで一緒に行き、
タクシーでうちに向かい、
次の日は休みだからと、夜更かしして
話してるうちに2人ともいつの間にか
眠ってしまったけど、一緒に
こうして過ごすことが出来る相手が
菖蒲で私は嬉しいなんて思ったのだ。



話してくれるということは、
信頼してくれてるからこそ‥‥


筒井さんがジュニアのことを
話してくれたのも嬉しかったし、
菖蒲も普段は聞かないことを
話してくれたから向き合いたいって
思えた。


私は恋愛は初心者だから
何もアドバイスすら出来ないけど、
話を聞くことはできる。



そのことで、誰かの心を少しでも
軽くしたり安心させられたらいいな‥



それから少しして、菖蒲から
ちゃんと話し合って彼と分かれた事を
告げられ今度は私が菖蒲の家に泊まりに
行くことにして金曜日の夜は飲もうと
決めたのだ。



『霞、お待たせ。』


「お疲れ様‥‥あ、杉浦君?」


着替え終えた私は、
エントランスの涼しい場所で
待っていると、菖蒲と一緒に
歩いてきたのはイケメンの杉浦君だった


相変わらず背が高くすらっとしている
のに、顔立ちが整っていて
菖蒲の言う通り目の保養になる


『井崎さんお疲れ様です。』


「お疲れ様です。帰るなら途中まで
 一緒に行きますか?私たちこれから
 飲みに行くので。」


『いいですね。
 ご一緒したいくらいです。』


あ‥‥‥そうか‥‥
杉浦君は菖蒲の事が好きだったんだ‥


あれから気持ちも変わってないのか
分からずだけど、菖蒲はどうしたいん
だろう?

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