玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
『霞、一緒でも大丈夫?』


「えっ?うん、私は大丈夫だよ。
 普段話せない人と話せるのも
 楽しみだから。杉浦くんは本当に
 予定なければどうですか?」


『是非お願いします。』



若いのに綺麗なお辞儀をしたあと
私を見て嬉しそうに笑ったので、
気持ちは継続してるのだと分かった。


菖蒲の慰め会のようなご飯会だけど、
杉浦君はこの事実を知ったら
どう思うのかな‥‥


当の本人は目の保養としか
思ってないかもしれないけど、
こうして並んでると美男美女だから
とてもお似合いに見えてしまう。


『よし、じゃあ3人で美味しいもの
 食べに行こう!!』


『えっ!?い、犬塚さん!?』


私と杉浦君の間に立つと、
両腕をそれぞれ私たちの腕に絡め組むと
嬉しそうに菖蒲が歩き始めた


ふふ‥‥
悪気はないんだけど嬉しそう‥‥


片思いの時って、さりげない
好きな人との会話やこんな時間すら
愛しいと思うから私も嬉しくなる


いつものオシャレ過ぎない
洋風居酒屋に行くと、偶々予約の
キャンセルが出たのか個室に入れて
まずはお酒を頼んで乾杯をした。


『はぁ‥‥暑いから美味しい‥
 杉浦君はどんな食べ物が好き?』


『えっ‥‥あ、好き嫌いはないので、
 犬塚さんのオススメで構いません。』


『そうなの?霞はいつもの感じで
 いいとしてどうしよう‥‥男子と
 居酒屋とかなかなか来ないから
 お肉とか頼もうかな。』


テキパキとタッチパネルを操作する
菖蒲を正面から見つめる姿が
可愛らしくて見ていると、それに
気づいた杉浦君が照れくさそうに
下を向いた。



パッと見落ち着いててしっかりしてそう
なんだけど、菖蒲の前では企画部でも
こんな感じなのかな‥‥


『よし、注目完了。
 杉浦君今日はありがとう。
 私の失恋食事会だから泣いたら
 ごめんね、気にしなくていいから。』


『えっ?どういうことですか‥?』


『上手くいかなくなっちゃって、
 ちゃんと話しあって別れたんだ。
 あ、でも大丈夫よ?
 意外にも元気だから、今日は一緒に
 美味しく食べて飲んでくれたら
 いいから。ね?』


『はい‥‥』


「杉浦君‥今日は余計なことを考えず
 とにかく楽しく過ごさない?
 菖蒲もそれを望んでるから。」



小声でそう言うと、
少しだけツラそうに笑ったあと
菖蒲を見て杉浦君も笑ってくれた。

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