玉響の花霞       あなたにもう一度恋を 弍
いつもなら夜でもテンションお構いなしの蓮見さんだからこそ、こんなに
静かで落ち着いてるのに違和感を感じ、
助手席に乗せてもらうと、身を乗り出して問いかけた。



真っ暗な夜の闇にしとしとと小雨が
降り、フロントガラスを濡らす中、
蓮見さんが俯いた後私の方を見た。



『‥‥‥落ち着いてよく聞いてほしい。
 ちゃんと聞ける?』


「‥‥聞けます。
 だから教えてください‥‥」


膝の上で両手をグッと握りしめ、
変に煩い心臓の音が鼓膜まで響くのを
耐えて見つめた



『‥‥‥空港からの帰りに、
 事故に巻き込まれて病院に2人とも
 運ばれた。』


えっ?


‥‥‥‥事故?



心音が煩くて、鼓膜が破れそう‥‥


どういうことなのか受け止められず、
頭の中の動きが止まったように
何も考えられない



『俺もまだ詳しいことは見てないから
 分からないんだ。
 亮からまた連絡するって言われて
 待ってたとこだけど、電話が
 繋がらないんだよね。』


「筒井さんたちは‥‥大丈夫です。」


私の頭を撫でる蓮見さんに
泣くのをぐっと堪える


「約束したんです‥‥帰国したら
 顔を見に行くって‥‥だから‥」


『霞ちゃん‥‥行こう。
 救急で運ばれた病院名は聞いたから
 行けば分かるから。』



「はい、お願いします。」


怖くてこわくてたまらない‥‥

でも今私がここで泣いても、
どうしようもない。


それよりも1秒でも早く
筒井さんと亮さんの無事を確かめたい


そして筒井さんに会いたい‥‥


それから病院に着くまでが物凄く
長く感じられるほど落ち着かなくて、
両手を祈るようにして組み、
ずっと窓の外を眺めていた。


泣くのを我慢している私の代わりに
泣いてくれてるかのような秋の夜の雨が
窓を何度も伝ってゆく



『着いたよ。‥‥夜間の救急窓口の
 受付に聞きに行こう。
 ‥‥霞ちゃん?』


「あれ?‥‥おかしいな‥‥
 足が震えちゃって‥‥」


車から降りた途端、
自分の体が小刻みに震えていることに
気付いて足がすくんでしまっている


早く行きたいのに動かない私を
見かねて蓮見さんが手首を握って
くれるとそのまま肩を抱いてくれ
私を見下ろしウィンクをした


『俺、女性の扱いは上手いからさ。
 さ、行くよ。』


蓮見さん‥‥‥
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