もう一度、恋を灯して、消さないで
プロローグ
…あっっっつい。
右を見ても左を見ても、人、人、人。
空気を求めて上を見上げれば、ほんの少しだけ星々が顔を見せている。
…避難しよう。
只今の時刻は午後20時。
地元の神社で行われる夏祭りに中学の頃の友達から誘われて来たものの、たったの30分で後悔し始めた。
なんといっても、この人の多さ。
地元の小さな夏祭りに来るのなんて近所の子供たちくらいだろうと踏んでいたけれど、その考えは甘かったらしい。
子連れの親子、高校生くらいのカップルに、おじいさんおばあさんたちがわんさかいる。
その上、かき氷と焼きそばを買いに行った友達とはぐれる始末。
さっき連絡をとったら、こっちに戻ってくるのは難しいとのこと。
…私、ここに何しに来たんだろ。
わざわざTシャツと短パンからワンピースに着替えてきたっていうのに、人混みの一部になって終わり。
…まぁ、仕方ないか。
友達には「疲れちゃったからもう帰る」とだけ言っておいたし、心配することも無いはず。
さっさと帰ってシャワー浴びて、さっさと寝よ。
パタパタと手で顔を仰ぎながら、避難してきた神社の拝殿から腰を上げようとしたときだった。
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